この記事は2023年5月21日時点での情報を元にして記載しています。以下多くの事例が「クラウドサービス」についての言及のため、バージョンアップ・機能追加及び修正などによって、今後改善される可能性があります。
インボイス対応にご注意
インボイス制度のスタートが近づいてきて、テレビ・ラジオ・新聞などインターネット以外のメディアの場でも盛んに「インボイス対応」という宣伝や解説番組が増えてきました。
事業を営まれている皆さまにとっては避けて通ることの出来ない重要なテーマなので、気になる方も多いかと思います。特に小規模事業の経営者の皆様にとって、多分大きく関連するだろうという点としては、以下のようなテーマが挙げられます。
- 請求書の発行をするのにインボイス対応するにはどうしたら良いか?
- 領収書の発行でインボイス対応するにはどうしたら良いか?
- レジでのレシート発行でインボイス対応するにはどうしたら良いか?
- 会計・経理とか確定申告のときに、結局何をどうすれば良いのか?
↑これらのそれぞれの対応については、別途個別の解説ページでご案内します。(各項目をクリックすると該当ページへ移動します)
巷では様々なITツールやITサービスが「インボイスに対応しています」「2023年10月からの制度改正に対応しています」と謳っていますが、中にはよく注意しないといけない内容のものも多々あります。
この解説ページでは、弊社が実際に調査した内容のうち、注意すべきものをご紹介させていただきます。
Squareデータのサービスにご注意
キャッシュレス決済・POSレジ・請求書発行など総合的な販売管理・クラウドサービスを提供しているSquareデータですが、厳密に言うと現時点ではこのサービスはインボイス制度に対応していませんので、ご利用の事業者様は十分ご注意ください。
※Squareデータ様は5月8日の案内で「10月1日までにインボイス制度に対応する準備を進めています」と公式に案内されています。→インボイス制度に関するお知らせ
POSレジの対応
- Squareレジでの「レシート発行」「領収書発行」は、設定することによりインボイス対応することが出来ます。
- ただし他サービス(エアレジやスマレジなど)のように、POSレジの設定で「適格請求書発行事業者番号(いわゆるインボイス登録番号)」を設定・登録する欄はありません。事業者情報(住所とか電話番号とか)あるいはレシート発行の際の「コメント欄」などに番号を記載する、という方法でしかインボイス番号を印字・表記することが出来ないので工夫が必要です。
会計システムとのデータ連携
一般的にクラウドPOSレジは、クラウド会計システムと自動でデータを連携できることが大きなメリットの一つとなっています。
- SquareのPOSレジも会計システムとのデータ連携はいちおう出来るようになっています。
- ただし、SquarePOSレジの場合通常の設定方法でデータ連携できるのは「freee」「MFクラウド会計」のみです。
- この2つ以外の会計システムに対してデータを連携することは(個別に独自システムの開発をするのなら別かもしれませんが)普通ではムリです。
POSレジデータの保存・出力では部分的にしかインボイス対応していない
非常に残念ながらSquareデータのPOSレジ機能ではインボイス対応が部分的にしか出来ていないとご案内せざるを得ません。
- 販売したその時に「レシートor領収書を発行する」機能はインボイス対応しています。
- ただしあとで(1ヶ月毎とか1週間毎に)売上データを集計する場合、消費税率ごとに税額・本体価格を集計する機能はSquareデータにはありません。
Squareデータでのデータ集計・出力では、売上に対する「消費税額」は全て「10%・8%・及び非課税」全ての合計金額しか記録されない&出力されないのです。(この点は、Squareの日本法人の公式サポートへも問合せて確認をさせていただいています)
このことから、POSレジを会計システムと連携させようという場合、freee・MFクラウド以外の会計システムでの連携では、インボイス対応での取引ごと・消費税率ごとの税額・本体価格をデータとして取得できないため、POSレジと会計システム連携ではインボイス対応出来ていない、ということになってしまいます。(ただし、いわゆる「合計転記」で一定期間の売上額を税率ごとに分けて本体価格・税額を集計することは出来ますので、合計転記方式であればなんとか対応は可能です)
現在Squareレジ(およびSquareデータ)をご利用されている事業主様、くれぐれもご注意ください。
請求書管理はインボイス制度には対応していない
Squareデータで提供している「請求書発行・管理機能」もインボイス制度には対応していません。
- 請求書を発行しお客様に「電子請求書」をメール(あるいはSMS)送信した際には、税率ごとの合計額が表示される。
- ただし請求書を(PDFなどにして)印刷する場合には、請求書には税率ごとの消費税額も、本体価格も集計されず「全部まとめた消費税額の合計」しか表記されない。
- 請求データを後から集計・データ出力する場合については、税率ごとの税額集計機能がそもそも全く備わっていない。
このため、「電子請求書」(スマホやブラウザの画面で見るだけの請求データ画面)以外で請求書発行をした場合、インボイス制度には対応しないことになってしまします。
ムームードメイン(GMO)はインボイス対応していないのでご注意
ムームードメインはホームページやネットショップを運営する際に「ドメイン(アドレス)」を登録し管理するための「ドメイン管理サービス」のひとつですが、このムームードメインへの「ドメイン利用料の支払」に関しては、インボイスに対応していませんので、こちらもご注意ください。
ムームードメインでの利用料金の支払は全てオンライン(クレジットカード等)での支払なのですが、この支払に対してムームードメイン側では「領収書の発行」をしていません(請求すれば発行してもらえる、というのではなくて請求しても発行はしてもらえません)。クレジットカード会社発行の請求明細をもって領収書とする、という規約になっていますが、カード会社の請求明細は多分どのカード会社も「取引総額・日付・支払相手」しか記載されないため、消費税額がいくらだったのか?を証明する書類は出ないということになってしまいます。
バリュードメイン(GMO)もインボイス対応していないのでご注意
バリュードメインも同じくドメイン管理サービスですが、こちらもムームードメインと同様です。(ただし、こちらはサポートセンターへ今後対応する予定がないのか?を問合せている最中で、この記事を執筆している時点ではまだ回答待ちです。現時点では対応していませんが今後対応される可能性がないわけではありません。)
やよいの青色申告等、弥生会計シリーズの「あんしん保守サポート」も対応にご注意
個人事業主さま、小規模事業者様には使っている方も非常に多いと思います。「弥生株式会社」のソフトウェア・アプリを使っている場合ほぼ100%「あんしん保守サポート」に加入されていると思いますが、このサポートの年間サポート料金の支払いも、注意が必要です。
あんしん保守サポートの支払はクレジットカードでの引き落としになりますが、年間保守サポートの更新案内が事前に来るだけで、支払いに対する請求書あるいは領収書は発行されません。
ただし弥生の場合、別途領収書の発行をサポートセンターへ依頼すれば「紙」での発行・郵送はしてくれるようになっていますので、全くインボイス対応していないというわけではありませんが。
インボイス対応のその「先」にご注意
経費精算・請求書発行・キャッシュレス決済・・・様々なサービスで個別に「インボイス対応」を謳っていますが、サービスを選定する際にはご注意ください。
経理・事務業務の全てに関連してくるのでご注意
例えば「請求書発行をインボイス対応」と眼の前に見えている課題だけをインボイス対応したとしても、殆どの場合「その先」があります。
- 請求書発行をインボイス対応してもさらにその先、会計・経理ソフトとの連携やインボイス対応が必須になってくる
- 領収書や請求書発行をデジタル化&インボイス対応すれば、その先「データ保存」の話が必須になってくる
- インボイスと関係ないような、「勤怠管理」「給与計算」が経理ソフトと連携している場合、請求書発行だけ連携していない別のアプリでイイのか?問題。
- ウチは社名ロゴデザインをする時にロゴの中にインボイス登録番号を入れてあるから、請求書システムのインボイス対応で「登録番号ここへ必ず入れてください」と指定されてしまうと、結果請求書に番号が2箇所載ってしまう・・・
などなど・・・会計やインボイスとは一見何の関係もないように思える「え?こんなところまで?」という細かな事務作業にまで多岐にわたって影響が波及します。
特に会計事務所さんや顧問税理士さんとの確認を慎重に
インボイス対応で請求書アプリや領収書アプリだけを単独でデジタル化した、インボイス対応したという場合、いざ確定申告とか期末決算のときになって、顧問税理士さんの運用されている会計システムと適合しなくて困った、なんてことが十分想定されます。
導入してしまった後になってからでは、こういうことはなかなか修正しにくい問題ですから、顧問会計事務所さんなどがある場合、事前によくご相談しましょう。
よく分からない・不安だと言う場合はデジタルの専門家に
多くのインボイス制度対応の場合、なんらか「デジタル」「IT」の話が関わってきます。色々複雑な要因が絡まってこれは難しい話になりそうだ、とか、あるいは何をどうしたら良いのかよく分からない、不安だ、という場合には、ぜひ「デジタル・ITに精通していて、なおかつ会計・経理や経営全般に理解のある専門家」にご相談するようにしてください。
弊社でも、インボイス制度対応に関するご相談やご質問を承っています。