弥生会計のデータで税理士さんや会計事務所さんとやり取りをしている場合、「データの同期」が問題になることがあります。そういう場合のやり取りの方法・手順の解説。
この記事は、実際に岸本ビジネスサポート(旧パソコン相談所)にご相談いただいているお客様から頂いたご相談を元に、実際のやり取りの手順をマニュアル化したものです。同じようなケースが多々あると思い、参考までに掲載させていただきました。会計処理のやり方や、会計データの内容によっては、この方法ではうまくいかない場合もあるかもしれませんので、あらかじめご了承下さい。
弥生会計のデータのやり取り、問題は・・・?
弥生会計には、「データのバックアップ」と「バックアップデータの復元」という機能があります。自分の会社内で入力したデータを、会計事務所や顧問税理士さんに監査していただく場合、この機能を使ってデータをやり取りすればよい、と言われていますが、これにはちょっとした問題があります。それは「やり取りしている間の作業の停滞」。具体的な例で言うと・・・
A社さんは、弥生会計を使って社内の会計データを入力しています。B会計事務所さんに会計処理を依頼していて、毎月会計データを送って、内容を監査していただき、不適切な部分の修正などをしてもらっています。このやり取りの中で、例えば・・・
日付 | A社 | B会計事務所 |
9月1日 | 8月分の会計データを弥生会計で入力
データのバックアップを取り、B会計事務所へ送信 |
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9月2日~15日 | 処理停滞 | 受信した8月分のバックアップデータを、事務所内の弥生会計で復元し、データの確認。必要に応じて、科目の修正や変更などを行う |
9月16日 | 修正したデータのバックアップを取り、A社へ返送する | |
9月17日 | 返送されてきたバックアップデータを、自社内の弥生会計へ復元 |
バックアップデータのやり取りで会計事務所とやっていると、上記のように、会計事務所さんが監査・データの修正をしている間は、会社のほうで会計データの入力を一切出来ないんですよ、ね。上記の例では、A社さんは、9月17日なるまで、9月分の会計データを弥生会計に入力できない、ということになる。
こういう場合、バックアップデータのやり取りではどうしても具合が悪いのです。そういう時に同対処するか・・・?その対処方法の一例が、以下の手順です。
上記の例にならって、会社側を「A社」、会計事務所側を「B事務所」として説明します。
A社からB事務所へバックアップデータを渡す
A社から、データを監査してもらうためにB事務所へ渡す部分の手順は、通常通りです。
A社の弥生会計で、会計データをバックアップします。(この時、あとで分かるようなファイル名をつけておくと良い。例えば「20110201A社バックアップ」のような・・・)
バックアップした会計データを、B事務所へ渡します。渡す方法はもちろん、どのような方法でも構いません。USBメモリに入れて渡すでも良いし、メールに添付して送る、でもOK。
B事務所でバックアップデータを開き、監査・データ修正を施す
バックアップデータを受け取ったB事務所は、そのままバックアップデータを復元します。
復元したら、通常通り仕訳データの確認・監査と必要ならば修正などを行います(この部分は会計事務所さん、税理士さんの専門分野です、ね)
B事務所から監査済みデータをA社へ返却する
この部分が重要です。ここはB事務所側で行う作業
監査済みデータを抽出します。
まずはじめに、必ず監査済みの会計データを、万一の際に備えてバックアップしておきます。その後、
- 弥生会計でA社の会計データを開きます。
- 仕分け日記帳を呼び出します。
- 仕訳日記帳で、「監査していないデータ」を抽出し、削除します。
監査済みデータは、例えば「10月1日~11月30日」のように、日付で区切ってあると思います(会計事務所、税理士さんの場合、大抵は「10月分・11月分の仕分けについて確認・修正」というような作業になりますよ、ね)。その作業を元に、逆に 「監査していない部分の日付」が分かるはずです。(12月1日~12月20日分は、まだ監査していない、というような感じで)。その日付を元に、仕訳日記帳の「検索機能」を利用し、「監査していない部分の仕訳データ」を日付で検索します。 - 抽出した(検索した)データの全ての行を削除します。
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この作業を行うことで、結果的に「監査済み」のデータだけが、B事務所の弥生会計上にいったん残ることになります。
すべての行の削除は、「先頭行をクリック」→「最終行をShiftキーを押しながらクリック」→「全部の行が黒く反転するので、右クリックして削除」です。
抽出したデータをバックアップします。
これもUSBに入れるなり、メール添付するなりの方法で渡します。ここまでで一旦B事務所の行う作業は終了。
監査済みのデータを受け取って、復元します。
ここからは、A社の方で行う作業です。
いったん既存の弥生会計データをバックアップしておきます
A社の弥生会計データを、一旦バックアップしておきます。(ここから先で行う作業で不具合が生じた際に、元に戻す必要が生じた場合のバックアップです)
バックアップ後、同じ既存の弥生会計データから、仕訳データをエクスポートします。
既存の会計データを開いて、仕訳日記帳を開きます。
仕訳日記帳で、「監査の終了していない日付範囲」を検索します。(例えば、この手順で説明している表記の場合は、「監査済みデータ」は「2010年10月1日~11月30日」までなので、監査の終了していない範囲は、「10年12月1日~現在まで」という事になりますね。
この範囲の仕訳データを、仕訳日記帳から「エクスポート」します。(エクスポートは、仕訳日記帳のメニューバーから「ファイル」→「エクスポート」と操作します。)
エクスポートする場合のファイル名は、後で分かるように「エクスポート10年12月1日~現在」というようなファイル名にしておくと分かりやすいです。
ご注意!ここでの操作は、「データのバックアップ」ではありません!「仕訳日記帳での仕訳データのエクスポート」です。間違えないように!
B事務所から受け取った監査済みのバックアップファイルを復元して上書き保存します
既存の弥生会計のデータを開いたままで構いません。B事務所から受け取った、「監査済み」のバックアップファイル(先ほど説明したように、このバックアップファイルは、「バックアップ101001-101130」というファイル名になっているはずですから、区別が付きますね)を復元します。復元する際には、「新規保存」をするか「上書き保存」をするか聞かれますので、ここでは「上書き保存」をします。
注意!この作業をすると、元々の既存会計データは消去されてしまいます(消去されるのが目的ですから、消去されてしまっても構わないのですが)。万一、何かの理由で既存の会計データ(監査前)のデータをもう一度復元させたい、という場合のために、必ず「いったん弥生会計のデータをバックアップしておく」作業を確実に行ってから復元してください。
監査の終っていない日付分のデータをインポート
弥生会計のデータが、「監査済み」のデータで上書き保存(復元)し終わったら、「監査の終っていない日付分のデータ」をインポートします。
手順は以下のとおり
監査済みの復元した弥生会計上で「仕訳日記帳」を開きます。
- 仕訳日記帳のメニューで「ファイル」→「インポート」を選びます。
- インポートファイルを選択します。
- この説明の場合では、先ほどエクスポートしてあった「 エクスポート10年12月1日~現在」というファイル名を選択します。
- インポートが終えたら、作業は完了です。
ここまでの一連の作業で、やり取りの作業は完了です。念の為に、適当な日付の伝票を呼び出してみて、内容に間違いがないかどうか確認しておきましょう。
A社・B事務所双方の負担が軽減します
このやり方をしないで、一番最初に説明した「バックアップデータだけのやり取り」をすると、会計事務所や税理士さんの方で、会計データを修正したり監査する時間・日数がかかればかかるほど、A社側の負担が増えます。
仮にB事務所さんで、監査・修正作業に1ヵ月かかったとしたら、A社では、1ヶ月間まったく会計データ入力が出来ないわけですから、ね。
これを、今回説明させていただいた手順で行うことによって、B事務所さんでの作業が何日かかろうと、A社側の入力作業が滞る事がなくなります。
A社にしてみれば、経理担当者のペースで仕事ができますし、B事務所さんにしてみれば、「A社の経理担当者さんから、まだですか?というような催促を受ける事がなくなる」ことで、落ち着いて作業を進められるというメリットがあります。
実際この方法でやっている、私どものお客様企業では、この方法で毎月1回やり取りをし、3年間運用しています。
他にもやりようがあります
今回説明した方法は、要するに「監査の終えていない仕訳データだけを一旦エクスポートしておいて、後からインポートする」というところにポイントがあります。ここさえ押さえておけば、もう少し違う手順で組み立てることも可能です。ご自分の会社・会計事務所さんのやり安い方法にアレンジして活用してみてください。
勘定科目に変更・追加などがある場合に要注意
なお、このやり方では、ひとつ注意すべきところがあります。
A社あるいはB事務所のどちらか一方で、勘定科目や補助科目が追加された場合、データのエクスポート・インポートでは科目対応出来ない場合があります。仕分けの入力過程で、「科目そのものが追加になった、変更になった」というような場合は、一度まるごとバックアップ・バックアップの復元を行って、両者のデータを全て同じものにする必要がありますので、ご注意下さい。