業務改善や業務の標準化・・・特に小さな規模の会社やお店の経営者様必見・・・についての注意点とポイント
ルールや手順はナンのため?誰のため?
小さな会社やお店で経営課題についてお話をお伺いすると、経営者様からかなりの割合で出てくるのが「社内のルールをちゃんと決めたい」「業務を標準化・マニュアル化したい」というご相談。その時に私どもでは必ず「どうしてルール化したい、標準化したいとお考えなのですか?」と質問するようにしています。すると大抵の経営者様からは概ね以下のようなお答えをいただきます。
- 特定の社員やスタッフだけが出来る業務というのをなるべく多くのスタッフで共有化したい(○○さんがいなくなったら仕事が止まってしまう、ということのないようにしたい)
- いちいち社長の自分に聞いてこなくても自分で考えて自分でやってくれればイイのに、煩わしい(自分の指示をいちいち仰がなくてもある程度仕事が回っていくように仕組みを作りたい)
- 作業のムダ・ムリ・ムラをなくして効率化を図りたい(仕事が非効率で生産性が悪いと思うので、コスト削減も兼ねて効率化をしたい)
こういう課題意識や取り組みそれ自身は非常に素晴らしいことだと思います。ただ、同時に大抵の経営者様から「これがなかなか上手くいかないんだよね」という愚痴にも似たご感想やご相談をいただくことも多々あります。・・・どうして一生懸命ルール化や標準化をしようとしても上手くいかないことが多いのでしょうか?
実際に「やる」のは誰?
ルール作って守らせて、標準化してその通りに仕事をさせて、そうすればムダやムリ・ムラは少なくなり生産性が上がるはずだ。多くの経営者の皆様は、そうお考えになっていることと思います。もちろんそれは間違いではないと思いますが・・・それ、実際にやるのは誰?という視点で考えてみたことはありますか?・・・ルールを守って、標準化通りの作業手順を覚えて、それを実際にやるのは、経営者のあなたではなく従業員の皆さんですよね?
では、従業員の皆様の立場で先程の「質問」の答えを考えてみたことは?
従業員の皆さんの本音
○○さんがいなくなって困らないように業務ノウハウや手順を共有したい
- え~~~?○○さんがやってるあの難しそうな作業を、私達も覚えなきゃいけないの?仕事が大変になるばっかりじゃない(><)
- え?オレがやってる仕事、他の人にやらせるようになっちゃうの?オレの仕事がなくなっちゃうのか?オレって必要とされてないの(T_T)?
社長の指示をいちいち仰がなくても仕事を進められるようにしたい
- ・・・って、そう言われたってさ、社長は自分の会社だからパソコンいじくり倒して壊しても、車のオイル交換にちょっと割高なスタンドでやってもらっても誰も文句言われないだろうけど、オレがやって壊しちゃったら責任取れないよ。だから、「PC調子悪そうなんですけどどうしましょう?」って聞いてるのに・・・自分で考えろって、そりゃあナイんじゃない(T_T)?
作業を効率化してコスト削減したい
- コスト削減のために、今よりも短い時間で作業完了できちゃったら、オレ残業代出なくなっちゃうじゃん・・・頑張って効率化したら給料減るんじゃ、やってられないよな~
- 4人でやってる仕事3人で出来ちゃったら、ウチのグループの誰か一人いらなくなるって話だよね?・・・それ、誰になったって恨みが残るじゃんか(T_T)
いや、もちろん経営者様の「どうしてそういう風に自己中心的に考えるんだよ?会社全体のことをもっと考えられないのかよ?」という気持ちも分からなくもありませんが・・・冷たいようですがそんなふうに経営者のあなたの期待通りに考えて動いてくれるスタッフさんなんて、絶望的なほどいらっしゃいません。
標準化・ルール化は会社のためですが、「会社のためになる=従業員ひとりひとりの幸福につながる」とは限らないのです。
従業員目線で、守れるルール・出来る標準化を
もうおわかりでしょう?「ルール化」「標準化」というのを決めて掛け声かけるのは経営者のあなたですが、実際にそれをヤルのは従業員の皆さんなのです。その方たちに「仕事の仕方を変えてもらう」「今まで無かったルールに従ってもらう」ためには、とっても丁寧にいくつかのポイントをクリアする必要があります。そのポイントとは・・・
ルールを守る・標準化を覚えるメリットを明示
今までなかったルールを作り、それを守れと求めるのですから、それなりに「そのルールに従って仕事を進めるメリット」がなければ誰も守りません。何らかのカタチで「自ら積極的にルールを守ってもらえる」ような仕組みや仕掛けをした上で、標準化・ルール化を進めましょう。
責任の所在・区分を明確に
上手くいかない多くのケースで共通すること。それは
- 守らなかった場合の従業員に対するペナルティは決められている
- それなのに、経営者(守らせる方)についての責任やペナルティは全く顧みられていない
という点です。特に、積極的に仕事に取り組んで頂くためのルールや標準化を取り決めた場合、「一生懸命やった結果、ちょっとしたミスや行き違いからトラブルが生じた」とか「想定外の事になってお客様に御迷惑をかけた」というようなことが発生して、その責任まで取らされるとなってしまっては、萎縮して何もできなくなってしまいます。
守らせている・標準化して覚えることを求めているからには、そうさせている経営者のあなたご自身が責任を全うする必要があります。
このルールを守って仕事をしてくれ(この手順のとおりに仕事をしてくれ)。それで何か問題が発生したら、どんなことでも責任は経営者の自分が背負う。
そういうメッセージを明確に発信して、スタッフの皆様に安心して全力でルール化・標準化に取り組んでいただける雰囲気や環境を整えること・・・そのために責任の所在や区分を明確にすること、が是非とも必要です。
長い時間をかけて継続的に取り組むつもりで
「無かったルールを新たに作って守ってもらう」「作業を標準化してその通りにやってもらう」というのは、言い方を変えれば「今までやってきた仕事のやり方や習慣を変えてもらう」ということです。
ちょっとしたクセや日常ルーチンを変えるのだって長く根気よく取り組む必要があるわけですから、ましてや仕事上のルールや手順を定着させるためには、長い期間の継続的な努力が必要です。数週間や数ヶ月で達成できると思わずに、長い年月・・・内容によっては数年~10年くらいかかるというつもりで、性急にならずにじっくり取り組むようにしましょう。