インボイス制度対応のための会計・経理作業

インボイス制度に対応するために、「課税業者になった」「適格請求書発行事業者番号も取った」「請求書の発行の仕方も覚えた」と、そこまでやったらその後は「自分の会社(お店または商売)の会計・経理作業をきちんとやる」ということが必要になります。このページではその解説をさせていただきます。

(1)会計・経理業務の基本

会計・経理の基本はとにかく「入ってきたお金(仕事上の収入とか、ギャラとか)」と「仕事上必要があって使ったお金(いわゆる経費)」をきちんと記録に付ける、ということです。

基本的には「お小遣い帳」とか「家計簿」のようなイメージのものをきちんと記録できれば良いのですが、その後確定申告をする、という点も考えると、ノートに帳簿をつけるというよりは、ちゃんと「会計ソフト」を使うことをおすすめします。

筆者おすすめの会計ソフトは、この記事を書いている時点では

  • やよいの白色申告オンライン
  • やよいの青色申告オンライン
  • 弥生会計オンライン

です(「やよいのナントカ」ばっかりですが、別にやよい株式会社さんの回し者ではありません^^;)

やよいの白色申告オンライン

これまでほとんど経理・会計作業をしてこなかった(あるいは手書きの帳簿だった)という方にオススメです。クラウドアプリなのでパソコンにインストールしなくても使うことができ、対応するスマホアプリもあります。やよいの白色申告オンラインは利用料無料で使えるので、こういう事務作業等に費用をかけられない、という方にはオススメです。

やよいの白色申告オンライン 公式サイト

※ただインボイス制度対応という観点からすると、ずっと白色申告のまま、というのはあまり得ではありません。ご自分の商売の会計・経理を有利にするためにもいずれは青色申告へ移行することをオススメします。

やよいの青色申告オンライン

既に青色申告での確定申告をしている、あるいはこれまで白色だったけどコレを機に青色申告に移行したい、という方にオススメのクラウドアプリです。利用の最初の1年間は無料です。(2年目以降は年間8,000円くらいの費用です・・・筆者としてはかなり良心的で良いんじゃないか?と思います(^^))

やよいの青色申告オンライン 公式サイト

弥生会計オンライン

やよいの青色申告オンラインより本格的な会計・経理のクラウドアプリです。法人の方や、またご商売の確定申告以外にも不動産所得とか、ご自身の財産があるというような多少複雑な会計処理を必要とする方にはこちらがオススメです。

弥生会計オンライン 公式サイト

(2)売上を記録する

仕事上で得た収入は、いつ、誰から、どういう形で(現金でもらったのか、銀行振り込みされたのか、あるいはクレジットカード支払いで受けたのか?など)入ってきたのか、を記録しておきましょう。

確定申告の基本は、「入ってきたお金と出ていったお金の計算」ですから、ね。

(3)経費を記録する

難しいことは省きますが、インボイス対応して確定申告するのなら「経費(仕事上必要があって出費した費用)」はきちんと記録しておきましょう。「この仕事をしていたからこそ必要があって使った」というお金はすべて経費になり得ます。ただ「使った」と記録するだけではだめで、それを証明する領収書とか請求書が必要です。

(4)領収書や請求書はデータにして保管

「電子帳簿保存法」という法律の指定もあって、領収書や請求書はなるべくデータで保管しておくようにしましょう。データで保管しておくのに一番カンタンでラクなのは「スマホで写真に撮っておく」です。ただ、とった写真をスマホに残しておくだけではかなり危ないので、以下のような「保管」をしておきましょう。(1,2どちらかをしておくか、あるいは両方しておくか、しておきましょう)

1.会計アプリに保存しておく

上記でご紹介したやよいシリーズのアプリを始めとするクラウド会計アプリは、経費や請求書のデータを保存しておく機能があります(スマホで撮った領収書の写真をアップしておく機能がある)。この機能でクラウドアプリに保存しておけば、確定申告の際にも困らずにすみます。

2.クラウドストレージに保存しておく

Dropboxとか、GoogleDriveとか、クラウド上にデータ保存できるサービスを利用してそこへ保管しておく、というのも一つの手です。会計アプリに保管しておくだけでは心もとない、という場合に併用すると良いだろうと思います。筆者のオススメとしては「Googleドライブ」を推しています(個人的な好みと、機能がこういうデータ保管に適しているという観点からです)。

(5)請求書・領収書の発行

取引相手に料金やギャラを支払ってもらう際に、その支払いの根拠となるもの、つまり請求書や領収書を出してくれと求められることがあります。インボイス制度へ対応した場合、請求書(および領収書)の書き方・作り方のルールに従う必要があります。請求書発行のルールとは以下の様なものです。

  • 請求書・領収書には、かならずあなたの会社・お店・ビジネスの適格請求書発行事業者番号を明記してください。
    請求書・領収書に事業者番号のないものは、「請求金額に含まれる消費税を納付せずに自分の収入にしてしまっている」とみなされます。結果的に請求相手は消費税を別途税務署へ納めなければならなくなり、消費税の二重支払いになって大損をさせてしまいます。
  • その番号に該当する「事業者名」を明記してください。
    適格請求書発行事業者番号を取得すると、税務署から通知が届きます。その通知に記載されている事業者名のことです。この事業者名は「確定申告」の際に記載する事業者名でもあります。フリーランスとして仕事をされている個人の方の場合、ペンネームとか芸名とかを記載するのではルール違反です。ペンネームや芸名などを記載した場合でも、事業者番号の近くに本名とかあるいは届け出ている事業者名を明記してください。
  • 請求内容の中身(明細)には、必ず消費税率と税額を記載してください。
    もし、請求内容の中に軽減税率対商品(8%のもの)がある場合には、10%のものと8%のものを、上図のように分けてそれぞれ記載する必要があります。

この他、細かいことを説明し始めるとキリがないのですが、ここでの要点は「請求書や領収書を頻繁に発行することになるようであれば、その都度手書きやExcel作成などをせずに、請求書や領収書を発行するシステムやアプリを利用しましょう」ということです。

(6)経費支払の際の注意点

上記(3)(4)でご説明した「経費支払」の際には注意すべき点があります。それは

請求書・領収書などの記録書類に(支払う相手の)適格請求書発行事業者番号が記載されているか?

という点です。(間違えないようにしてください。あなたの適格請求書発行事業者番号ではありません、支払う相手の会社や事業者の番号です)

あなたが事業者として相手へ費用を支払う場合、(5)とは逆に相手が発行する請求書に適格請求書発行事業者番号が記載されていないと、たとえ消費税込の金額を払ったとしても「消費税を支払った」と認めてもらえず、確定申告のあとにもう一度その額を税務署へ支払う羽目になってしまいます。

そこで、経費支払をするのにあたっては、以下の点を対策しておきましょう。

普段、定期的に請求書を受け取る相手(取引先)がある場合、早いうちに相手先に「適格請求書発行事業者番号を取ってありますか?」と質問して確認しておいてください。

適格請求書発行事業者番号を取ってある、という相手の場合は、特に気にしなくても構いません。ただ、もし「ウチは免税業者のままでいくから、適格請求書発行事業者番号は取らない」ということになったら、つぎのどちらかの対処をしておきましょう。(どちらもやらないでいると、あなたの会社・お店・ビジネスが、消費税の二重納付の負担をしいられることになってしまいます)

  1. 免税業者のままの(インボイス対応しない)相手先には、「消費税分」を差し引いて支払いをする旨を伝えて、2023年10月以降は消費税分は支払わないことにする。
  2. そもそも、そういう面倒なことになるのも煩わしいという場合は、その取引相手との取引をやめる

小さな会社やフリーランスの方にとって、上記のような対応をするのは実際問題とてもむずかしい、ということは筆者自身も痛いほど良くわかっています・・・が、いわれのない消費税の二重負担をして商売をどんどん苦しくしていってしまうのはぜひとも避けていただきたいものです。