――ITコンサルの私が考える、生成AIとの分担と依存のリスク
生成AIは便利です。しかし、便利さに任せて仕事も判断も預け続けると、AIが使えなくなったときに、自分の業務まで止まりかねません。ITコンサルタントの私自身、AIの反応と説明に翻弄されました。使いこなす技術を磨く前に、「どの業務を、どこまで任せ、人が何を担うか」を決める必要があります。
■ ITコンサルの私でさえ、迷って翻弄されています
私は、小規模事業者のデジタル化やIT活用を支援するITコーディネータです。自分で試し、実際に業務で使ってみることで、良いところも難しいところも、お客様に具体的に伝えるようにしています。
生成AIも、その一つです。
ChatGPTの個人向けProプランを契約し、約5件のシステム開発案件を、別々のプロジェクトで進めています。開始から4~8か月ほど経過した案件もあり、仕様の相談、開発方針の整理、作業結果の確認などに、かなり深く使ってきました。
ところが、2026年10月13日の作業では、反応が極端に悪くなりました。ひどいときには、30分以上も「思考中」のまま、返答がありません。
仕事を進めたいのに、待つべきなのか、止めるべきなのか、会話を新しくすればよいのか。その判断に時間を取られてしまう。
私は、もともと会話を一つに延々と続けていたわけではありません。案件を分け、一つのテーマが一段落するたびに、新しい会話に切り替えていました。それでも困ったのです。
遅延の原因は、この記事を書いている時点では特定できていません。会話や資料の量、ブラウザや通信、サービス側の状況など、確認すべき要素はあります。「長く使ったから必ず止まる」と断定するつもりもありません。
ただ、原因が何であれ、AIの返答を待つことが、自分の仕事の進行を左右する状態になっていた。その事実は、重く受け止めています。

■ 困ったときにAIへ相談して、さらに迷う
改善方法を探そうと、今度はGeminiに状況を相談しました。
最初の回答は、長いチャットに履歴をためすぎたことが最大の原因だ、という説明でした。私が「会話はすでに細かく分けている」と伝えると、今度は通信や添付資料、サービス側の問題へと説明が変わりました。
さらに、長期的な運用について尋ねると、整理すれば心配ないという説明から、任せすぎると行き詰まるという説明へ、話が変わっていきました。
もちろん、追加の情報によって見立てを修正すること自体は必要です。問題は、確認できていない原因や将来の見通しについても、確かなことのように説明されることです。
困っているときほど、「そういうことだったのか」と納得したくなります。しかし、その説明が正しいかどうかを、また自分で確認しなければなりません。
AIの問題をAIに相談し、その説明を確かめるために、さらにAIに尋ねる。
この循環に、私自身が入りかけていました。ITの支援を仕事にしている私でさえ、迷い、翻弄されているのです。
■ 「便利だから、これも頼もう」が積み重なる
私が最も懸念しているのは、単に返答が遅くなることではありません。
便利だと感じるほど、知らず知らずのうちに、任せる内容と範囲が広がっていくことです。
最初は、メールの下書きを頼むだけだった。
次に、打合せの内容を整理してもらう。
そのうち、案件の経緯も覚えておいてほしくなる。
さらに、次に何をするべきか、優先順位まで相談するようになる。
一つひとつは自然な使い方です。忙しい経営者ほど、頼れるものには頼りたくなります。私も同じです。
しかし、その積み重ねによって、仕事の前提や判断の根拠が、自分の手元よりもAIとの会話の中に偏ってしまうことがあります。
その状態で返答が来なくなったり、過去の前提と食い違う説明が出たりしたら、何を基準に仕事を再開すればよいでしょうか。
AIに頼む範囲だけが広がり、人が確認する仕組みと、業務を引き継ぐための記録が追いつかなければ、仕事の進め方そのものが崩れかねません。
■ 「こまめに整理しましょう」だけでは足りない
こうした話をすると、「会話を分ければよい」「資料を整理すればよい」といった対策が挙げられます。
それらは、試す価値のある対策です。ただ、それだけで問題が解決すると軽々しく言うことはできません。
日々の仕事に追われる中で、AIへの依頼が増えるたびに、役割や資料を見直し続けられるでしょうか。特に、社長自身が営業も現場も事務も担う小規模事業者にとって、その管理も一つの仕事です。
AIで時間を節約するつもりが、いつの間にかAIを管理し、説明を検証し、やり直す時間が増えていく。そこまで含めて、業務が楽になったかを考える必要があります。
利用者の注意力と整理整頓だけに頼った対策では、便利さによって依存が深まる問題を十分に扱えないと思います。
■ 使いこなす前に、業務と分担を決める
生成AIを仕事に取り入れる前に、明確にしたいことがあります。
「どの業務を任せるか」
「どこまで任せるか」
「人が何を確認し、何を決めるか」
「AIが使えないとき、どう続けるか」
たとえば、メールの返信なら、AIには文案を作ってもらう。相手との関係や事実関係を確かめ、送信を決めるのは人です。
打合せ記録なら、AIには要点と宿題を整理してもらう。正式な決定事項として残す前に、人が元の記録と照合します。
システム開発なら、実装や修正案の作成を任せる範囲を決める。そのうえで、どの資料・ソースを正式な基準とするか、何を検証して完了とするか、本番へ反映する判断を誰が担うかを明確にします。
作業の区切りごとに、確認済みの決定事項、現在の状態、未解決の課題、参照すべき資料の場所を、会話の外にも残す。AIが作った引き継ぎ要約も、人が確認してから使う必要があります。
これでトラブルがなくなる、という話ではありません。トラブルが起きても、仕事の基準と続きを自分で取り戻せるようにするためです。

■ 意識して絶ちたいのは、「まずAIに聞く」習慣
私は、生成AIにどっぷり依存する習慣を、意識して絶つ必要があると感じています。
何か困ったら、まずAIに聞く。
返答が来るまで、自分の判断を保留する。
経緯はAIとの会話を見れば分かるから、と手元の記録を省く。
こうした習慣は、便利さに慣れるほど、自分では気づきにくくなります。
依頼する前に、自分が求める成果物と完了条件を一度書く。重要な判断の根拠は、元の資料に戻って確かめる。AIの返答がなくても進められる作業を用意する。
AIの利用時間を減らすことだけが目的ではありません。自分の仕事の目的、記録、判断を、自分で持ち続けることが目的です。
■ 小規模事業者へ、軽々しく「任せればよい」とは言えない
私はこれからも、生成AIを実際に使い、その可能性を探っていきます。助けられている仕事もたくさんあります。
ただ、その便利さだけを取り上げて、「優秀な相棒として何でも任せましょう」と、小規模事業者の皆様に勧めることはできません。
導入時には便利でも、数か月後に依頼の範囲が広がったとき、誰が業務を把握し、誰が結果を確かめ、止まった仕事をどう再開するのか。そこまで考えてお伝えする必要があります。
ITコンサルタントの私でさえ、迷い、翻弄されています。その経験を隠して、簡単に使いこなせるかのように説明するのは、支援者として誠実ではないと思います。
生成AIを使い始めるときに、まず考えていただきたいのは、上手な質問の仕方よりも、自社の業務と分担です。
何を任せ、何を自分で持ち続けるか。
そして、AIが使えなくなっても、仕事を続けられるか。
私自身、その問いに立ち戻って、使い方を見直しているところです。

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