メールは今や多くの事業者にとって欠かせない連絡手段です。取引先とのやり取り、請求書の受け取り、オンラインサービスからのお知らせ、金融機関やカード会社からの連絡など、毎日たくさんのメールが届きます
その一方で、こうした「仕事で日常的に使うメール」を悪用した詐欺も増えています。
以前の迷惑メールといえば、文章が不自然だったり、明らかに変な日本語だったりして、比較的見分けやすいものもたくさんありました。けれども最近は、実在する企業やサービスの名前、ロゴ、メールのデザインなどを真似て、ホンモノそっくりに作られたメールも珍しくありません。
さらに、生成AIなどの普及によって、自然な日本語の文章を作ることも容易になっています。
そのため「日本語がおかしいから怪しい」という見分け方だけでは、十分とは言えなくなってきています。
特に注意したいのが、仕事中に思わず反応してしまうような内容のものです。
例えば
- 請求書を送付します
- 未払料金があります
- アカウントが停止されます
- パスワードの有効期限が切れます
- 配送先を確認してください
- 至急ご確認ください
といったような件名です。
忙しい時にこうしたメールが届くと、「何か支払い忘れがあったのではない」「取引先からの請求書かも知れない」「アカウントが使えなくなると困る」と焦ってしまい、メール本文のリンクや添付ファイルをそのまま開いてしまうことがあります。
けれども、この「焦らせる」ということ自体が、詐欺メールでよく使われる手口の一つです。

怪しいメールを見分ける3つの基本
難しいセキュリティ技術を覚えなくても、日常業務の中で出来る対策はあります。まずは、次の3つを社内の基本ルールとして共有しておくことをおすすめします。
1.差出人の「名前」だけを信用しない
メールソフトには「〇〇株式会社」「◯◯銀行」「〇〇カード」のような差出人の名前が表示されます。
けれども、この表示は必ずしもその通りの本人だとは限らないのです。
例えば、画面上では「◯◯カード株式会社」と表示されていても、実際のメールアドレスを見ると、その会社とはまったく関係のないアドレスになっていることもあります。
そのため、少しでも不審に感じた場合は、差出人名だけではなく、メールアドレスまで確認する習慣をつけておきましょう。
ただし、メールアドレスも、本物に似せて作られている場合があります。例えば
「example.co.jp」 に似せて 「examp1e.co.jp」のように、アルファベットの「l」を数字の「1」に置き換えるなど、一見すると気づきにくいアドレスが使われることもあります。
「知っている会社名、知っている担当者名だから大丈夫」と思い込まないことが大切です。
2.メール本文のリンクをすぐに押さない
詐欺メールでは、
- 「こちらから確認してください」
- 「ログインして手続きをしてください」
- 「支払い情報を更新してください」
といった案内とともに、文中にリンクが記載されていることがよくあります。詐欺的なメールの場合、
このリンクをクリックした先のWebページや画面が、本物そっくりに作られた偽サイトになっている
というケースが非常に多いのです。
その「本物そっくり」のサイトに騙されて、そこでメールアドレスやパスワード、クレジットカード情報などを入力すると、その情報が盗まれてしまう恐れがあります。
こうした被害を避けるには、メール本文のリンクからアクセスするのではなく、
- 普段使っているお気に入り(ブックマーク)
- スマートフォンの公式アプリ
- 自分で検索して開いた公式サイト
などから確認する習慣をつけておくと安心です。
例えば、「お客様情報の漏えいについて」というようなメールがクレジットカーd会社(を装った悪意の第三者)から届いた場合でも、そのメールの案内に書かれているリンクを押すのではなく、一旦メールを閉じてそのクレジットカード会社のホームページを検索する、あるいはご自分のお気に入りからクリックする、またはスマホのカード会社公式アプリを開いて確認する、というような対策&習慣です。
これだけでも、多くのフィッシング詐欺を避けることが出来ます。
3.請求書や振込先変更は「別の方法」で確認する
事業者が特に注意したいのが、請求書や振込先変更を装ったメールです。例えば
- 「今月から振込先が変更になりました」
- 「添付のご請求書をご確認ください」
といった内容です。
もし本当に取引のある会社名で送られてきた場合、疑わずに処理してしまう可能性がありますね。
けれども、もし少しでも
- 「いつもとなんか違う」
- 「急に振込先が変わっている」
- 「担当者の文章の雰囲気が違う」
というような違和感を感じたら、そのメールに返信して確認するのではなく(それでは、騙している相手に更に巧妙な返信を送られてしまうだけです)、電話などの別の手段で確認してください。
例えば「先ほど振込先変更のメールをいただきましたが、御社から送られたもので間違いありませんか?」と確認するだけです。
重要なのは、「届いたメールへの返信」で確認しないことです。
仮にメールアカウント自体が不正利用されていた場合、返信しても詐欺を行っている相手に届いてしまう可能性があるからです。
普段使っている電話番号や、以前から登録してある連絡先など、別の経路で確認しましょう。
添付ファイルにも注意
怪しいメールは、リンクだけではなく「添付ファイル」が使われることもあります。
「請求書」「注文書」「見積書」「納品書」など、仕事でよく使う名称のファイルが添付されていると、つい開きたくなりますね。
特に「請求書を送ります」「至急確認してください」と書かれているのにもかかわらず、取引先名や担当者名に心当たりがない場合は要注意です。
本当に必要な書類であれば、送信元に確認してから開いても遅くありません。
怪しいメールは「見抜く」より「確認する」
最近の詐欺メールは非常に巧妙です。
そのため「自分なら見抜ける」「ウチの社員は大丈夫」と考えるのは少し危険です。むしろ大切なのは、
「見抜こう」とすることではありません。
「少しでも違和感があったら、すぐに操作せず確認する」というルールを作ることです。
- メール本文のリンクからログインしない
- 振込先変更は必ず電話で確認する
- 怪しい添付ファイルは開かない
- 判断できなければ他の人に確認する
といったルールを決めておくだけでも、被害の可能性をかなり減らすことができます。
高価なシステムより、まず基本動作から
もちろん、ウィルス対策ソフトやセキュリティサービス、多要素認証など、システムや仕組みによる対策も重要です。
けれども、人がやっている仕事である以上、どれだけシステム的な対策をしていても、全ての怪しいメールを完全に防ぐことは難しいものです。
最後に判断するのは「人」です。そして、詐欺を仕掛ける側も、パソコンの弱点だけではなく、「人が焦る」「急いでいる」「確認を省略する」といった心理を狙ってきます。そのため、
「急いでいるときほど、一度確認する」
という習慣が非常に重要です。メールを開いた瞬間に、
- 「今すぐ」
- 「至急」
- 「本日中」
- 「アカウント停止」
など、不安をあおるような言葉が目に入ったときこそ、すぐにクリックするのではなく、一度確認してみてください。
その数十秒が、大きなトラブルを防ぐことにつながるかもしれません。
まずは社内で3つだけ共有してみてください
最初から複雑なセキュリティルールを作る必要はありません。
まずは、
- 差出人の名前だけを信用しない
- メール本文のリンクをすぐ押さない
- 請求書や振込先変更は別の方法で確認する
この3点を、社内で共有するところから始めてみてはいかがでしょうか。
セキュリティ対策というと難しく感じますが、日々のちょっとした確認の積み重ねも、立派な情報セキュリティ対策です。

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