9月の「価格交渉促進月間」を機に、商売の価値と価格を見直してみよう
「この商品は3,000円です」「この仕事は1件5万円です」・・・商売や事業をしていれば、商品やサービスには当然「価格」があります。ところで、その3,000円や5万円は、なぜその金額なのでしょうか?
- 仕入れ価格から算出した
- 昔からこの金額だった
- 周囲のお店がだいたいこのくらいだから
- 普通この業種だとこれくらいが相場だから
- 取引先から提示された単価だから
色々な理由があると思います。ただ、筆者としてはこういう金額を考える時にもうひとつ確認して(振り返って)ほしいのが
その価格を最後にきちんと見直したのは、いつか?
ということです。2026年9月は、国が定める「価格交渉促進月間」です。今回はこれを機に、単に「値上げするかどうか」ではなく、
そもそも自社の商品・サービスの価格は、今の商売・事業に合っているのか?
を考えてみたいと思います。

価格は「かかったコスト」だけでは決まらない
価格を考えるうえで、原価はもちろん重要です。
仕入れ価格、材料費、人件費、電気代、燃料費、運送費、外注費、決済手数料などが上昇しているのに、販売価格だけを据え置けば、当然利益は減っていきます。例えば
従来の原価: 8,000円
現在の原価: 8,800円
販売価格: 10,000円
であれば、以前2,000円あった粗利益が1,200円まで減ってしまっていることになります。
売上は同じでも、商売の中身は大きく変わっています。
だからこそ定期的に、
「今、この商品を売って本当に必要な利益が残っているか」
を確認する必要があります。
ただし、小規模事業者の価格設定には、もうひとつ重要な視点があります。
それが
「誰に買ってほしいのか」
です。
「誰に、どんな価値で買ってほしいか」を価格で表す
大手企業であれば、大きな商圏(広い商圏・エリア)を対象に、できるだけ幅広い顧客へたくさん販売することを前提に価格を考える必要があります。
一方、小規模事業者の場合は少し事情が異なります。
地域が限られていたり、商圏が狭かったり、特定のお客様との関係を大切にしている、という事業者の皆さまは少なくないのではないでしょうか?
もしそうならば「できるだけ誰にでも買ってもらえる価格」だけを考える必要はありません。むしろ
「こういうお客様に利用してほしい」
「こういう価値を求める人に選んでほしい」
という考え方の方が優先される場合も多々あります。
例えば
「多少高くても、丁寧な仕事を求めるお客様」
を対象にするのであれば、価格だけで競争する必要はありません。
逆に
「地域の高齢者の方が日常的に利用できるサービス」
を提供するのであれば、利用しやすい価格帯そのものが商品価値の一部になるでしょう(リーズナブルだからこそ利用してもらえる)。
つまり、とりわけ小規模事業者にとっての「価格」とは
自社が、誰をお客様と考え、どのような価値を提供するのかを示すメッセージ
でもあります。

価格を見直すなら、3つの数字と1つの問いから
価格の見直しに、難しい計算をする必要はありません。
まず主力の商品・サービスを一つ選んで、次の内容を確認してみてください。
(1)現在の販売価格・・・いくらで販売しているか?
(2)現在の原価・・・仕入・材料・外注・送料・人件費などを含めて、実際にどの程度かかっているか?
(3)現在残っている利益・・・(1)から(2)を引いて、どれだけ残っているか?
そしてもうひとつ
(4)その価格で、誰に買ってほしいのか?
です。
安さを求める幅広い顧客なのか
品質や専門性を重視する顧客なのか
近隣のお客様なのか、ネット越しの遠方のお客様なのか
特定分野の企業や法人なのか
ココまで整理すると、「原価が上がったから5%値上げしよう」というような単純な話ではなく
自社の商品・サービスを、誰に、どの価値で、いくらで提供するのが適切なのか?
という商売上・事業上の非常に重要な経営判断になります。
言い方を変えれば「商品やサービスの価格を決めることは、事業そのものの価値や方向性を決めることと同じ」というとても重要なポイントなのです。
デジタルを活用すれば、価格はもっと管理しやすくなる
価格の見直しは、デジタルとも非常に相性がよいものです。
例えばExcelやGoogleスプレッドシートなどの表計算ツールで
| 商品・サービス | 現在価格 | 原価 | 粗利益率 | 最終価格改定日 |
|---|---|---|---|---|
| 商品A | 10,000円 | 8,800円 | 12% | 2023年4月 |
| 商品B | 8,000円 | 5,000円 | 37.5% | 2025年10月 |
という一覧を作るだけでも、「しばらく価格を変えていない商品」「利益率が下がっている商品」を見つけることが出来ます。
POSレジや販売管理システム、会計ソフトなどに細かく売上や経費をつけている場合はそれらの蓄積データも大いに活用できます。
せっかく数字をデジタルで管理しているのであれば、記録するだけではなく「価格を決めるための経営判断材料として活用する」ことが重要です。
生成AIも「価格を考える相談相手」に出来る
ChatGPTなどの生成AIも活用できます。例えば
「現在価格10,000円、原価8,800円の商品で、粗利益率20%を確保するには販売価格はいくら必要か」
といった計算をさせたり、複数商品の粗利益率を比較することも出来ます。
さらに
- 価格改定のお知らせ文
- 取引先への値上げ交渉メール
- 価格変更の理由を説明する資料
などを作成することも出来ます。
ただし「この商品はいくらで売ればいい?」なんていう判断や助言をAIに任せることはやめましょう。
- どんな方にどんな価値を提供するのか?
- 地域や商圏ではどの程度の価格が受け入れられるのか?
こういう「意思決定」に関わる部分は、経営者ご自身が自分で考えなければならない部分です。
AIは価格を決めるためのものではなく、数字を整理し、選択肢を考えるための補助役として使うのが良いでしょう。
価格を見直すことは、商売そのものを見直すこと
価格には、「原価」があります。「利益」があります。そして「お客様への提供価値」があります。
ですから、価格を見直すことは、単なる「値上げ」の話ではありません。
誰に商品を買ってほしいのか?
そのお客様へ何を提供したいのか?
商売・事業を続けるために、いくら利益を残す必要があるのか?
それを改めて考えることです。
まずは、自社で一番よく売れている商品やサービスを一つ選んで観てください。
そして、
「この価格(値段)を最後に決めたのはいつだっただろう?」
「今もこの価格が、本当に自分たちの商売に合っているだろうか?」
と確認してみてはいかがでしょうか?
9月の価格交渉促進月間は、価格だけではなく
自社の商売そのものを見直すよいきっかけ
になると思います。
価格の見直しも、経営相談の一つです
岸本ビジネスサポートでは、ITやデジタル化のご相談だけでなく、こうした価格設定や原価・利益の見直し、商品・サービスの整理など、日々の経営に関するご相談にも対応しています。
「値上げしたほうが良い気がするけれど、いくらにすればよいか分からない」
「今の価格で本当に利益が出ているのか、一度整理してみたい」
「商品ごとの採算を見えるようにしたい」
「ExcelやGoogleスプレッドシートなどを使って、今後は自分で確認できるようにしたい」
といった段階からでも構いません。
単に「いくら値上げするか」を決めるのではなく、誰をお客様とするのか、どのような価値を提供するのか、そのためにどの程度の利益を確保する必要があるのかを一緒に整理し、そのうえで必要に応じてデジタルやIT、生成AIも活用しながら、今後も続けて確認できる仕組みづくりまでお手伝いします。
「うちの場合はどう考えればよいだろう?」と思われたら、お気軽にご相談ください。

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