ITコーディネータ独立開業録~13~

筆者(岸本)が独立開業、ITC資格を取得して「何とか食えるようになった」体験記その13

獲得したスキル・技術・ノウハウ

独立系ITCとして「食える」(=何とか生計を立て暮らしていける)ようになるまでに、筆者がどんなスキルを獲得したか?をご紹介していこうと思います。

今回の解説ページでは、「非IT」(というと適切ではないかも知れませんが)の知識や経験値の話をご紹介します。

独立開業・法人設立に関する知識・実経験

これは「実際にやってみる」ことで獲得した知識です。実際の開業前に、通り一遍等の脱サラノウハウ本のような本をざっと斜め読み程度はやりましたが、支援機関に相談しに行ったりセミナーを受けたりという「系統立てた学習・習得」は一切ありません。独立してITCとして食っていこうと思ったら、「個人事業主として開業する」か、あるいは「法人設立して創業・開業する」かのどちらかに必ずなります(週末起業なんていう方法もありますが、私の場合は覚悟を決めて「コレ一本でいく」と決めていたので)。この「実体験」を通じたノウハウ獲得が、直接的にこういうスキルの獲得に繋がりました

この「自分自身の開業・独立」の際に、自分が予想していなかったこと、用意して無くて慌てたことなどを、当時克明に記録するように務めました。それが、20年近く経った今になって「独立開業のための助言・アドバイス」の原資・知識となっています。実際問題、後になって独立開業に関する書籍やセミナーを色々見聞きしましたが、これら実体験を通じて獲得したノウハウや知識は、たいていどの本にもどの講師の話にも出てきませんでした(つまり、実体験を通じて見聞きしたホントの生の話は、そういった通り一遍等のセミナーやノウハウ本よりも遥かに実践知になり得るということです)。

ちなみにこれらの体験・経験は、当サイトの「独立開業」解説コーナーで解説しています。

会計・経理の知識と実務

これも自分の事業運営を通じて直接的に実務と知識を学びました。具体的には主に

  • 複式簿記の基礎知識
  • 複式簿記会計を処理するための会計ソフトや経理事務に関するノウハウ

などです。

経営計画・経営戦略の立て方

これはITCのケース研修を始めとする様々な研修を通じて獲得しました。ただ私の場合、幸運やタイミングにも恵まれて、こういった「経営戦略立案」の研修を受けた直後に、支援先事業所や経営者さんからそういうテーマの相談を頂いたり、アクションプランの立て方を学んで活かそうと思った頃にちょうどよいタイミングで、付き合いのスタートした支援先様へ提案する機会に恵まれたり・・・ということがあり、研修で獲得したノウハウ・知識が形骸化しないうちに実践で研鑽できたことが、その後の支援ノウハウにも直結しました。
ちなみにこの経営計画・経営戦略については、ITCの方なら当たり前かもしれませんが

  • BSC
  • SWOT分析
  • 3C分析

など、一般的な経営支援・コンサルティングに使いそうなノウハウは一通り勉強しています。

経営者との徹底的な「対話」

系統立てた研修や自己研鑽ではありませんが、実はIT以外の部分で最も重要な役割を占めた(と、今になって思う)のは、「経営者との徹底的な対話」でした。これは、私が講師を務めさせていただいているフォローアップ研修などの機会があるたびにお話させていただいていることですが、私の場合とにかく「どんな小さなITの話でも、経営の話を持ち出す」という素っ頓狂なやり方で経営者の胸元にグイっと入っていくというスタイルをとったことがこういう「対話」につながっています。

対話を通じて、私が自覚的に取得しようとした(そして実際学ぶことが出来た)のは

  • 実際に会社を運営している経営者が日々考えていることがどんなことか?
  • (本や研修では学ぶが)実際には経営者が考えていないこと・どうでも良いと思ってスルーすることはどんなことか?
  • 経営者は外部の専門家にどんな事を求めているのか?

など、実践の場でしか得られない情報や暗黙知でした。

支援先での「実務」経験知

これも実際の支援を通じての獲得です。

ITCが支援を通じて直接関わるのは主に「事務方」のスタッフさんです。これらの方々の仕事の進め方・やり方はもちろん事業所・会社・お店によって千差万別です。けれども、それを「個別のケースだから」とその場限りでの経験にしないよう、とにかく色んな事を質問したり確認しながら「メモ・記録を取る」習慣をつけました。これがつもり重なると、結構色んな知識となり様々な場で役に立ちます。例えば

  • 卸売業では商品単価に「2.58円」なんていう「何円何銭」の世界が未だに当たり前のようにある
  • 売上を上げる(=商売をしてお金をいただく)客のことを「顧客」という場合もあれば「得意先」という場合も「取引先」という場合もある。そしてこれは同じ業界・業種だと共通している事が多い
  • 販売価格(実際に客に売る際の値段)のことを指す用語も、業界によって様々な言い方をする

支援する「姿勢」を身につける

上記のノウハウ・知識はどれも「支援経験を通じて支援先企業様から逆に教わった」事ばかりが積み重なっています。これらの知識・ノウハウは、支援にあたってこちらが「教えてやる」「指導してやる」的な上から目線で対峙しては決して得られません。

むしろ「この業界は未体験なので色々ご教示いただきながら進めさせてください」というような「こちらが教わる」つもりの姿勢で臨むことでこういった実践知が得られるようになります。

私が「食える」ようになった過程で獲得した最も重要なスキルは、この「支援する際に、こちらが教わるという姿勢を保ちながら支援をすすめる」というスタンスのとり方かもしれません。

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