このところお仕事で度々「会計処理との連動・デジタル化」のご相談を頂きます。(いや勿論、ご相談相手はすべて小規模事業者さん。)
クラウドレジ→クラウド会計ソフト連動→売上集計・会計処理のデジタル化&効率化
けど、この相談に対応しようと詳しく話を聞けば聞くほど、いつもいつもある結論にたどり着きます。
結局のところ、顧問をしている税理士さんや会計事務所さんが「どれだけデジタル化・IT化による業務の効率化・最適化のことに理解を示してくれるか?」に尽きる
ということ。
個人事業主や小規模事業者さん、会計処理はそれほど複雑怪奇なものではないとは言え、確定申告や決算処理を全部自力で出来るなんてことはまずありません。
「事業=自分の暮らしや人生」という密着構図があればあるほど、仕訳や会計処理に「生命保険」「家のローン(家=事業所の一部でもある)」「車の減価償却(自家用車=事業用にも使っている)」なんていう、事業(営業に関する経理処理)とは関係なさそうなものまで入ってくるのが当たり前。よほどの知識がない限り税の専門家に頼らざるを得ません。(と言うか、私個人的には積極的に税理士や会計事務所さんに支援を求めるべきだと思っていますが)
結果的に、最後の最後は「税理士さんに決算をお願いする」ことになるのですが・・・そうなってくると問題になるのが「仕訳処理はどういうアプリで誰がどのように行うのか?」です。
従来(というか今現在も)多くの税理士さんは、
事業主から何らかのカタチで仕分けに関する情報を受け取り、それを自分の使っている会計システムに入力している
という方がほぼ100%ではないかと思います。従来の「アナログな会計・決算処理プロセス」であればコレで良かったのです。「何らかのカタチで仕訳に関する情報を受け取る」というのも
- 領収書や請求書、売上集計の伝票やレジジャーナルなど物理的な「紙の証憑」を受け取ってそれを自分の使ってる会計システムに仕訳登録する
- 事業主がExcelとかなにかで作った仕訳データを受け取って、それを自分の使ってる会計システムに仕訳登録する
- 事業主が使っている会計ソフト(弥生会計とか)で作った仕訳データを受け取って、自分の使ってる会計システムにインポートして仕訳登録する
- 自分の使ってる会計システムの「クライアント版」を事業主に使わせて仕訳登録させる
つまり、最後の最後は「自分の(税理士さんの)使いやすい会計ソフトにデータを入れる」ことがゴールになっていました。
けれども、数年前(いやホントはもっと10年以上も前)から「会計処理のためだけにデータをわざわざ入力するなんて非効率はやめにしたい」というニーズが顕在化してくるのに連れて、この「税理士さんと事業主の間で求めるものの差」が大きく乖離してきました。
【税理士】
こちらは上記の通り、「最後は自分の処理しやすい会計システムへ仕訳データがきちんと入れられればそれでイイ」
【事業主】
売上も経費支払も、何らかの形で「システムに登録」されるのだから、それを自動で税理士の求める仕訳データへ変換してしまいたい
ナンの事を言ってるのか分からない、という方のために具体的な事例をひとつ・・・
クラウドPOSレジを使っていて、なおかつクラウド会計ソフト(MonerForwardとかfreeeとか)を連携させていると、レジで売り上げた内容は、ナニも処理しなくても自動で会計ソフトの方へ仕訳登録されます。また、クラウド会計ソフトの多くは「レシートや領収書をスマホで撮影すると、その内容を読み取って会計ソフトへ仕訳」なんてことが出来るようになっています。
それなら、レジと連動するクラウド会計ソフトでラクラク仕訳できれば、事業主さんは会計処理の作業がものすごくラクになるね!それなら、クラウド会計にシちゃったほうが何かと便利だ!ということに、当然なります。
ところが・・・現実はそういうわけに行かない。理由はほぼ全て「確定申告や決算をお願いしている税理士さん・会計事務所さん」
会計事務所側では「自分たちの使いやすい会計システムへデータをインポートする」ことをゴールにしています(それは上述の通り)。それは、「会計システム側で、正しく仕訳処理をするため」です。
けれども、素人(事業主側)が生半可に会計ソフトで仕訳処理をしたとしても、それは殆どの場合「修正」することになるから、変に仕訳データをインポートするより「金額と日付と内容を受け取ってこっち(会計事務所)側で処理しちゃった方がはるかに効率が良い」という理由から、かなり多くの税理士さん(にお願いしている個人事業主や小規模事業者)は、「仕訳とかせずに日付と金額と内容をきちんと記録して送ってください」と求められます。
んで、そういうことが色々絡み合って結局どうなるかというと・・・
- 事業主側は自分の使ってる会計ソフトや経理システムでいちおう「自分なりに仕訳を登録する」
- 会計事務所側は受け取った仕訳データを全部見直して(ナンなら全部ゼロから)仕訳登録し直す
という、とんでもない「二重登録作業」を発生させているというわけです。しかも・・・1の方には「レジで売上登録をする」という作業に加えて「会計ソフトで仕訳登録し直す」という作業が存在しているので、データの登録としては「一つの取引事実に対して、2回も3回も手入力作業を行っている」という状態・・・というのを、私自身、実際に何十回と目の当たりにしてきました。
【1.売上が発生する】・・・レジなり販売管理システムに売上取引を記録する
↓
【2.PCへ会計経理データとして記録】・・・Excelとか弥生会計とかクラウド会計へデータを記録する
↓
【3.会計事務所へデータを渡す】・・・2で作ったデータを会計事務所の仕様に合わせて変換・出力する
↓
【4.会計事務所で会計ソフトへ仕訳登録】・・・インポートする場合もあれば全部手入力の場合もあるようです
上記の「1→2」は、現在かなりいろんな分野・いろんなシステムで「会計ソフト連動」して自動化できてるから、事業主側で「1と2で二重登録する」なんていうムダは省けるようになってるんです。
けど、「2→3」に至る部分がなかなか自動化出来ない。理由は明確で「税理士・会計事務所側のシステムに事業主が合わせなければならないから」。
この部分を自動化・効率化出来ない限りは、じつは個人事業主や小規模事業者はどんなにデジタル化・IT化しても業務が効率化して本業に注力出来るようには、なかなかならないのです。
ここに寄り添い、小規模事業者のデジタル化・効率化に寄与できるかどうか?・・・税理士の先生方、会計事務所の皆さん、そろそろ本気でそういう事をお考えいただきたいなあと思ったりする今日このごろ。