フリーランスミュージシャンのためのインボイス対策~5~

(5)インボイス制度で「ギャラを払う側」の事情が変わる

2023年10月1日からインボイス制度というのが始まると、ミュージシャンのあなたというよりも、あなたにギャラや講師料を支払う側の事情が大きく変わります。ライブハウスなどがあなたにギャラを支払う場合を例にして説明しましょう。

※この(4)の節にミュージシャンのあなたがどうすればよいか?のヒントも書いてあります。(ただしきちんと理解するには最後の「ミュージシャンのインボイス制度対応」のところまで読んでください)

インボイス制度が始まると、税務署(国税庁)は消費税をきっちり納付してもらうために以下のようにルール変更します。

「ライブハウスがミュージシャンにギャラなどを消費税込みで支払ったとしても、そのミュージシャンが免税業者で消費税の納付をしなかった場合、その分の消費税額はライブハウスが負担して納付してもらうことにします」

つまり、このまま「免税業者」へ消費税も込みでギャラを支払い続けると、ライブハウスとしては消費税分をマルっと2倍払わなきゃならないことになってしまい、このままでは大打撃です。そこで、ライブハウス(に限らず、ミュージシャンのあなたにギャラを支払う立場の方)は、次のどれかの選択肢をとることになります。

(1)消費税を納税するようにミュージシャンに求める

インボイス制度のルールに従ったいちばん「まっとう」な選択肢がコレです。ライブハウス側はこれまで通り消費税も含めてギャラを支払う一方で、支払う相手(つまりミュージシャンのあなた)に「消費税課税業者として、支払った消費税を国に納めてくださいね」と求めることになります。

あなた(ギャラを支払われるミュージシャン)が、ルール通りに受け取った消費税を毎年国に納付してくれるようになればそれでOK・・・なのですが、約束したのに納付しないということのないように、「消費税をちゃんと納付している」ことを相手側(ライブハウスとかレコード会社とかなど)へ示さなければなりません。

ミュージシャンの対応策 その1:インボイス制度への対応をする

この場合、ミュージシャンのあなたとしては、インボイスのルールに則って、予め「消費税を納付する業者」として国に認定してもらう必要があります。その場合にどうしたら良いか?はコチラのページを御覧ください→「click!:免税業者が課税業者になってインボイス制度に対応する

(2)ギャラを支払う先の金額をすべて「消費税抜き」にする

ギャラを支払ってもミュージシャンの方たちが消費税を納付してくれないのなら、最初から払わなければイイ、ということで消費税分は抜きにする。

ミュージシャンの対応策 その2:インボイス制度への対応をしないでおく

この場合、ミュージシャンのあなたとしては、消費税の納付を求められるワケではないので、インボイス制度対応のためになにかしなきゃならない、ということはありません(つまりライブハウスなどの側がすべてこの対応になるなら、ミュージシャンは何もしなくて良いことになる)・・・けれどその代わり、支払われるギャラが「消費税抜き」になってしまうので、当然従来よりもいくらか(フツーだと10%のはず)金額が目減りします。

※ただし、この選択肢はギャラを支払う側のライブハウスなどにしてみると実はものすごく面倒くさいことになるんです(税務処理というのがものすごく複雑になる)、そのため、多分こういう選択肢はライブハウス側とかはやりたがらないだろうと思います。

(3)何もなかったことにして消費税の二重負担を受け入れる

この場合、ミュージシャンのあなたとしては、これまでと何も変わらず音楽活動・ライブ活動の対価を受け取っていればイイことになります。

ミュージシャンの対応策 その3:インボイス制度への対応はしなくて良し!

こんなありがたいことをしてくれるミュージシャン思いのライブハウスさんやレコード会社さんとかがあればイイですけど、向こうも商売なので、本来ミュージシャンが納付すべき消費税を黙って何も言わずに肩代わりしてくれる、なんてことはまず期待できません。

なので、実際にはこの選択肢を取ることはありえないでしょう。

(4)消費税を納付してくれないミュージシャンとの付き合いをやめる

消費税を「抜いて」支払うのはウチ(ライブハウス)側にはものすごく面倒くさい負担が生じる、かと言ってミュージシャン全員が「消費税を納付してくれる事業者」になってくれるわけじゃない・・・それならもういっそのこと免税業者になってる(つまりインボイス制度対応してない)ミュージシャンとは付き合いをやめよう、ライブハウスでの演奏活動も断ってしまおう・・・という選択肢がライブハウスの「事務作業」にとっては一番ラクな選択肢です。

ミュージシャンの対応策 その4:
インボイス制度対応しなくても付き合ってくれる相手とだけ仕事する か インボイス制度対応して付き合いを続ける

ミュージシャンのあなたとしては、「インボイス制度対応しないミュージシャンなんかとは仕事しない」というライブハウスや音楽制作会社なんてこちらから願い下げだ!と付き合いをやめてしまう、というのも選択肢の一つですが・・・多分そうなると、あなたが音楽活動できる(をして対価を得る)場は激減することになるだろうと思います。

付き合いのあるライブハウスやスタジオ、音楽制作会社などからこのパターンの対応を取られたら、「いよいよココのライブハウスも覚悟を決めたんだな」と理解して、あなたの音楽活動にとって最善の対応を考えるようにしましょう。

・・・ただ、こんな極端なことをやったらライブハウスや音楽制作の会社運営そのものが立ち行かなくなる(=出演してくれるミュージシャンがいなくなる可能性がたかくなる)のは目に見えてるので、この選択肢を取ることは、多分まずありません。


さてここまでお読み頂いた上で、では、フリーランスのミュージシャンとしては、どうしたらイイの?という話になりますね。ここから先がホントの「インボイス制度対応」解説です。

 

 

 

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