そもそも「DX」ってなんなの?

~小規模事業者が知っておくべきデジタルの真実~

「DXに乗り遅れると会社が生き残れない」「補助金を使ってDXを進めましょう」・・・最近、というかこの数年、テレビや新聞、あるいは商工会や商工会議所、金融機関のセミナーなどで「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉を聞かない日はありませんね。

けれども、多くの小規模事業経営者の皆さまにとってDXとは「何となくIT化のことだろう」というぼんやりしたイメージはあるものの、「結局、ウチの商売にどう関係するの?」と、よくわからないという感じなのが本音ではないでしょうか?

この記事では、ITやデジタルの専門知識がない方でも分かるように「そもそもDXとは何なのか?」というお話を、4つの論点から解説します。正体不明のよくわからない横文字に振り回されるのは今日で終わりにしましょう。

1.デジタルトランスフォーメーション(DX)とは?

DX(デジタルトランスフォーメーション)を直訳すると「デジタルによる変容」となります。正確な経済産業省の定義としては

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

です・・・なんのこっちゃ、全然分かりませんね(^_^;)・・・これをこれから説明していこうと思います。

実は経済産業省などが示すデジタルの進化には、大きく分けて以下の「4つの段階」があります。

  • 第1段階 アナログ
    紙の台帳、手書き伝票、口頭や電話でのやり取りなど、昔ながらの手作業です。
  • 第2段階 デジタイゼーション(部分的なIT化)
    手書きの帳簿をパソコンのExcelに入力する、電話の代わりにメールを使うなど、アナログな作業を部分的にデジタルに置き換える段階です。
  • 第3段階 デジタライゼーション(プロセスのIT化)
    クラウド会計ソフトやネット予約システムなどを導入し、業務全体の流れをデジタルで効率化する段階です。
  • 第4段階 DX(デジタルトランスフォーメーション)
    デジタルを前提として、ビジネスモデルや経営のあり方そのものを根本から変革することです。

つまり、本来の「DX」とは、単にパソコンを買ったり、新しいシステムを入れたりすることではありません。デジタル技術を使って新しい価値を生み出し、会社の稼ぎ方や組織の文化までをガラリと変えてしまうという、非常に壮大でレベルの高い取り組み(段階4)を指す言葉なのです。

2.なぜDXがもてはやされる?

では、なぜこれほどまでに「DX、DX」と世間は騒いでいるのでしょうか。それにはいくつかの理由があります。

(1)深刻な人手不足と生産性向上の必要性

日本の人口が減り続ける中、これまでのように「人を増やして売上を上げる」というやり方が通用しなくなりました。少ない人数でも利益を出せる体質にするため、国を挙げてデジタル化が推進されています。

(2)「補助金」と「流行語」の結びつき

国はデジタル化を推し進めるため、IT導入に関する様々な補助金を用意しました。その結果、システムを売りたいITベンダーや支援機関のセミナーが「補助金を使ってDXをやりましょう」と一斉に声を上げるようになりました。
このように、「DX」という言葉が補助金申請のキーワードとして使われ、「これをやらないと時代遅れになる」という焦燥感を煽る空気感が作られてしまったため、実態以上にDXという言葉がもてはやされるようになったのです。

3.DXすると何が良いのか?

本来の意味でのDX(ビジネスモデルの変革)や、その手前にある適切なデジタル化が成功すれば、会社には大きなメリットがもたらされます。

  • 「やりたくない仕事」から解放される:見積書や請求書の作成、手書きの転記作業、在庫の確認といった「利益を生まない時間」を大幅に削ることができます。
  • 「やりたい仕事(本業)」に集中できる:事務作業にかかっていた時間を、職人としての技術を磨く時間や、お客様へのおもてなしに充てることができます。
  • 経営の数字が見える化する:売上や原価、利益がすぐに把握できるため、どんぶり勘定から脱却し、「いつ値上げをすべきか」「どこに無駄があるか」といった正しい経営判断ができるようになります。
  • お客様とのつながりが強くなる:デジタルを活用して顧客情報を整理し、LINEなどで地域のお客さまと直接つながることで、再来店やリピート注文を生み出しやすくなります。

大企業のように「世界を変える新サービス」を作る必要はありません。小規模事業者にとってのデジタルの良さは、「今の売上を維持しつつ、社長の睡眠時間を増やし、お客様との絆を深める道具」を手に入れられることです。

4.定義や理念と乖離し始めたDXの現実

しかし、ここで非常に重要な問題があります。それは、世間で叫ばれる「DX」と、小規模事業者の「現実」が大きくズレ始めているということです。

現実1:7割以上の小規模事業者は「段階1」か「段階2」

経産省の統計では、従業員20人以下の小規模事業者のうち、実に7割以上が先ほどの4段階のうち「1. アナログ」か「2. デジタイゼーション」にとどまっています。社長自身が現場に出ている小さな会社に、いきなり段階4の「ビジネスモデルの変革」を求めるのは、そもそも無理があるのです。

現実2:エッセンシャルワークには合わない「変革」

建設、介護、飲食、美容などの小規模事業者は、人が手や体を動かすことで対価を得る「エッセンシャルワーク」が中心です。こうした現場の熟練の技や人間味は、デジタルで置き換えることはできません。それなのに無理にDXを目指そうとすると、自社の強みである「情緒的価値」や「人的な信頼関係」を壊してしまう恐れすらあります。

現実③:「手段の目的化」という悲劇 「補助金がもらえるから」「DXと言われたから」と、自社の課題を置き去りにして高度なシステムを導入した結果、「誰も使いこなせず、かえって業務が面倒になった」という本末転倒な事例が後を絶ちません。これはデジタル化が経営を助けるどころか、現場の邪魔(ノイズ)になってしまっている状態です。

DXという言葉に踊らされないために

「そもそもDXとは何か?」について解説してきましたが、結論として皆様にお伝えしたいのは、「DXという言葉の定義に、自分たちの会社を無理やり合わせる必要はまったくない」ということです。

私たち岸本ビジネスサポートは、「ITは単なる手段」であると考えています。 大企業の真似をして、必死に「DXのピラミッド」を登る必要はありません。「うちの商売を長く楽しく続けるために、どこを少しデジタル化すれば社長や従業員がラクになるか?」という「身の丈のデジタル活用」こそが、皆様にとっての正解なのです。

正体不明の「DX」への焦りは今日で手放しましょう。そして、本当に必要な小さなIT化の一歩を、私たちと一緒に考えてみませんか?