ITコーディネータ独立開業録~8~

筆者(岸本)が独立開業、ITC資格を取得して「何とか食えるようになった」体験記その8

金融機関へのアプローチその2(関係構築編)

前回「その7」では「屈辱編」と第して、金融機関との関係を構築しようとアプローチしたんだけど屈辱的な失敗に終わった話でした。今回の話は、その後、その金融機関さんと関係を構築し良好な連携を図れるようになった経緯のお話です。

あ、今更ですが誤解のないようにお伝えしていくと、筆者(岸本)は、金融機関との関係構築は非常に大切でぜひともアプローチすべきだと考えています(その7でのこっぴどい体験があったからといって、金融機関との関係構築なんてムリだムダだと言うつもりは毛頭ありません^^;)

きっかけは「ミラサポ」でした

この記事を書いている2021年6月13日時点では、もう過去のものになってしまいしかも「悪名高い」制度になってしまったミラサポですが、そのミラサポが金融機関さんとの関係を構築できるようになったきっかけでした。どういう経緯かというと・・・

1.金融機関のある支店で「IT全般に関する相談」が発生する

その7でご紹介した経緯の金融機関(信用金庫)さんのある支店で「販路開拓のためにWebを活用したいんだけど、単にホームページ作るだけじゃ多分うまくいかない。運用・集客も含めていろんなことを相談できる専門家はいないか?」という案件が発生したのだそうです。(→2014年の1月頃の話ですから、「その7」でご紹介したこっぴどい失敗体験からは5年近く経過していますが・・・^^;)

2.経営・事業の観点からIT支援のできる人材として認知される

発生した支援案件、後々きいたところでは、支店と本部法人営業部など様々な部署をたらい回しにされたそうです。「ホームページ業者はいるんだけど、その後の運営までフォローしてくれる業者がみつからない」「そもそも課題は販路開拓なんだけど、それをWebを活用して、となると経営のことや業務のことから、Web制作・運用、はてはその使い方トレーニングとかまでとにかくワンストップでお願いできる業者・・・そんな業者っているのか?」みたいな感じで・・・

その話を偶然知って私のことを思い出してくださった方がいたのです・・・「その7」でけんもほろろに門前払い食らわされた際に、その門前払いをした法人営業部の部長さんと一緒に同席していた、事務方の女性の方でした。

これも後々うかがった話ですが、その女性事務職の方が「随分前ですけど、ITだけでなくて経営・業務の分野まで幅広くワンストップで支援できますと提案しに来た方がいたと思いますけど、その方(=筆者のことです)に相談はできないでしょうか?」というような話を、その時の法人営業部の担当の方にお話されたそうです。

3.ミラサポへ専門家登録

で、当時国の専門家派遣制度のひとつとしてスタートしたばかりの「ミラサポ」という制度を使って専門家派遣を依頼できれば、相談される事業者さまにも負担がかからないし、当金庫から費用の持ち出しもせずにすむ・・・という信用金庫側の思惑も働いたらしく「ミラサポ専門家登録してもらえませんか?」というお話をいただきました。

当時、信用金庫さんとの関係構築のこっぴどい失敗体験でトラウマになっていた私としては、少しばかり抵抗感もあったのですが、「仕事獲得のために背に腹は替えられない」と自分に言い聞かせて、とにかく事務的に手続きをして、当の相談案件のために相談事業所を訪問しました。

4.ITCプロセス通りに進めて「ドびっくり」される

そのミラサポ訪問の初回、これは自分のスキルアップにもなる良い機会だと考えて、かねてから一度実践してみたかった「ITCプロセスをそのまんま実行してみる」というのを試しにやってみたのです。この記事をお読みいただいているITC資格者の方であれば想像できると思いますが・・・販路開拓にWeb活用したいという相談テーマの支援をするのに

  • 社長の想い・ビジョンを確認し
  • 内部外部環境を確認し
  • SWOTなどを簡易的に行い
  • KGI・KPIを抽出・確認し
  • 具体的なソリューションや課題解決策などを検討し
  • いくつかの案を提案として提示し
  • 具体的な実行計画を建てる

・・・ってなことをやってみたわけです。(1回のミラサポ訪問だけでは当然コレ全部できませんので、4時間×2回ほどかけました・・・それでも超簡易版でしたけど)

ミラサポ訪問で同席していた信用金庫の法人営業部の方が、この様子を見ていてドびっくりされたそうです。(初回訪問の最初の1時間ほどは呆れている様子がその場で私にも分かるほどでした・・・販路開拓・Web活用の話で来ているのに、なにをいきなり「社長、このご商売を始めたきっかけは?」とか「数年後にどうなっていたい」とか話してんだ?時間が限られてるんだから、早いとこホームページをどう作るかの話にイケよ、というような空気感がピリピリと伝わってきましたから(笑))

けれども、数時間経って徐々に課題テーマに近づいていって、その頃にはもう「ホームページをどう作るか?」「ネットショップはどうするのか?」という次元ではなく「作って・ネットショップ立ち上げて、それをどう販路開拓につなげるのか」というロジックが組み上がり始めていたことに気が付かれたらしく・・・初回訪問を終えて帰ってくる車中では(←このとき、信金さんの営業車に乗せてもらって同行したんです)、「ああいう手法というのは、どこで獲得されたものなんですか?なにかそういうノウハウみたいなものがあるんでしょうか?」というような質問攻めにあっていました^^;

ミラサポ案件の対応を通じて評価を高める

この初回のミラサポ対応が、幸いなことにこの信用金庫様の中でそこそこ良い評価をいただけたらしく、その後この信用金庫様からは何度かミラサポを通じた支援要請を頂きました。

この頃に筆者が強く意識していたのは、「どんな支援案件がきても、とにかくまずは引き受ける。そして引き受けた際には必ずITCのPGLに則って支援をすすめる」ということでした。それには、2つの目論見がありました。

1.各テーマの「専門業者」との明確な差別化を図る

ミラサポで入ってくる案件は、殆どの場合テーマや課題が具体的になっています。「ホームページをリニューアルしたい」とか「販売管理システムを導入したい」「会計ソフトをIT化したい」などなど・・・

こういった具体的な案件に対して「ホームページのリニューアルを引き受ける」「販売管理システムの導入を引き受ける」という形をとってしまうと、それらの専門業者(Web業者さんとか、販売管理システムの販売・営業・サポートをしているベンダーさんとか)と比較された場合に、必ず見劣りしてしまいます・・・そりゃ当然ですよね?私はWeb屋でもベンダーでもないのだから。

そこで、支援する際にはいきなり「具体的なソリューションやソフトウェアの話」に入らずに、とにかく「経営・事業・業務といった広い視点から入っていろいろな要素を加味する」スタイルを取ることで、「単にホームページ作るだけの業者」「販売管理ソフトを売って設定するだけの業者」とは根本的に異なる、ということを、事業者様・信用金庫様に理解していただくことを目論んでいました。

2.ITCとしての支援スタイルを信金さんに認識してもらう

そして、徹頭徹尾ITCのPGLどおりに進めることで、その仕事ぶりを確認・評価する信金の担当者さんに「この人は単にITに詳しい専門家、ではない」、そして更に「経営を診断して助言だけする人でもない」という認識を持ってもらうことを目論んでいました。

「事業・経営の視点から相談が出来て、そのうえITのことに詳しくて、ナンなら最後にどういうソフトやサービスをどう利用してどう運用すれば、どういう成果が出るのか?までアドバイスしてくれて、更には実際にサポートまでしてくれる」

そういう評価をしていただけるように、とにかく徹頭徹尾ITCのプロセスガイドラインをなぞるように仕事をしたのです。

一度関係を構築できると、とっても強い

その後、毎年コンスタントに年間数件~10件程度、この信用金庫様からは様々なご相談をいただくようになりました。

ここまでにも何度か解説している通り、最初はけんもほろろな対応だったとはいえ、一旦認知していただいて関係を構築できると、(その期待を裏切らない限りは)金融機関さまとはかなり強力な関係性を維持することが出来ます。

各地域の信用金庫さんは、中小・小規模事業者との付き合いが非常に広くそして深いので、良好な関係を築いておくと、ITCとしてはいろいろな仕事を獲得できる場の一つになりえます。

では、商工会議所とか商工会とかは?

さて、前回・今回でITCとして金融機関さんとの関係構築のことをお話しました、一方、同じように地域の中小・小規模事業者の支援窓口となっているのが商工会議所・商工会さんですね。

じゃあ、筆者は商工会議所さんとか商工会さんとは、どういう関係を構築しているのか?それはどういう経緯だったのか?・・・次回以降はこの点について解説を進めようと想います。

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