「インボイス制度が始まる」・・・数年前から税制や経営などのセミナー、講演会でこういう言葉をよく耳にするようになりました。この記事をお読みの事業経営者・支援機関・専門家の皆様も聞いたことのある方が多いと思います。ただ・・・「インボイスってなんだ?」と、なんだかよくわからないという方も多いようです。
そこで、この解説ページでは「事業経営をしている小規模企業の経営者様」向けに「インボイス制度ってなんだ?」という今さら聞くに聞けないテーマの解説をさせていただこうと思います。
解説の掲載にあたってまず予めにおことわりを。このページでは「制度への対応について認識を深めるための解説」を目的としていて「制度について正確な情報を提供する」目的ではありません。もちろん最初から間違ったことをお伝えするつもりで掲載はしておりませんが、そうでなくても難しい内容なのを正確を期すために言葉や説明が難解になるのを極力避けるようにしています。このため、税務や行政の専門の皆さまには「そういう説明の仕方は良くない」というご指摘を受けそうな内容も含まれています。これらの説明は「難解・複雑な内容を分かりやすく伝えるための表現」ということで、細かなツッコミ・ご意見はご容赦いただければ幸いです。
消費税取りっぱぐれ問題
さてインボイス制度の説明を理解するのにあたり、大前提として知っておくべき問題があります。それが「消費税の取りっぱぐれ問題」(税の専門家や法律の責任を追う方などちゃんとした方は絶対こういう言い方はしないので、お読みの方もその点にはくれぐれも慎重に^^;)
消費税取りっぱぐれ問題とは、
商品を買った際のお会計時にお客様から預かったはずの消費税が、国に収められないために、国の税収が思うように増えない問題
です。何のことを言っているかというと・・・図をご覧になりながらお読み下さい。
消費納税の基本
あるお店を営む事業者さんの、1年間の売上が1,100万円(1,000万円+預かり消費税100万円)だったとします。
この場合、国に収めるべき消費税は本来100万円のはずですが、図のように「1000万円の売上のために660万円(そのうち消費税が60万円)」を仕入先の業者に支払ったとすると、預かっている100万円の消費税のうち60万円は別業者に支払っているので、「100万-60万=40万円」だけを消費税として収めれば良いことになっています。これが仕入税額控除という考え方です。
ところで、これを「消費税を税として受け取る国税庁側」の立場から見ると・・・
一見、100万円分の消費税が40万円に目減りしているように見えますが、差額の60万円はこの仕入先業者から同じように消費税の納税を受けられますので、結果的に「40万円+60万円=100万円」となり、見込み通りの消費税を徴税できることになります。
ところが・・・
消費税の取りっぱぐれ
先程の例で、仕入先業者さんが「年間売上が1000万円未満という売上の低い業者さん」だった場合、この業者さんは「免税業者」つまり「預かった消費税を納めなくて良い事業者」さんとなります(法律でそういうルールになっているんです)。
そうなると、話が大きく変わってきます。
図のように、もともとの事業者さんは、ルール通り仕入控除の計算をして40万円消費税を納めますが、仕入業者さんは60万円の預かり消費税を納めませんから、国税庁としては40万円しか消費税を徴税できないことになってしまいます。
つまり、1000万円の消費が発生しているのに、国としての消費税の税収は40万円しかないということになってしまいます。
これが、筆者がこのページで言っている「消費税の取りっぱぐれ問題」というものです。
※ちなみに、この問題に詳しい知人に教えていただいた情報によると、この問題で国が「徴税できていない」つまり「本来納められるはずなのに取りっぱぐれた消費税の額」は、年間ウン兆円にも上るそうです・・・それってさ、ちゃんと徴税できていれば消費増税しなくても良かったんじゃないの?ってくらいの額です。
消費税をちゃんと徴税するために
で、この消費税取りっぱぐれ問題を解消するために、国はインボイス制度というルールを設けることにしました。それは、分かりやすく上記の例で言うと
- 仕入税額控除で消費納税を100万円→40万円にして納めるのはルール通りだからそれでイイ
- けど、仕入控除するのなら残りの60万円が、仕入業者を通じて確かに納税されたってことを、ちゃんと証明して下さい。
- 証明できなければ、たとえあなたが「仕入業者に60万円支払い済みだから」と言ったって知りません、それとは別にきっちり耳揃えて100万円払っていただきます。
というルールです。ひええええ^^;!?・・・と思いません^^;?
仕入先に支払った消費税が、最終的にちゃんと国に納税されているかどうかを確かめて、証明できないのなら、こっちが二重払しなきゃならないのかよ(@_@;)!?
という・・・そういう制度が、2023年10月からスタートすることになっています。これが「インボイス制度」です。
じゃあどうすれば良いか?・・・消費税を二重払(二重負担)せずにすむにはどうすれば良いか?と言うことになると、事業主(経営者)としては、取るべき道は2つのどちらかになります。
- 免税業者や消費税の納税をしていない業者との取引をしない
- 免税業者や消費税の納税をしていない業者と取引する際には、消費税を払わない
色々厳しい今どきの時代、背に腹は代えられないですから、多少厳しい事を取引先にも求めなければなりませんね。
ただ・・・取引している相手先が消費税の納税をしているか?免税業者じゃないのか?・・・というのは、普通は分かりません。
そのための対応措置として、国も対応策を考えています。
ウチはちゃんと消費税を納税してるぜ証明番号
正しくは「適格請求書発行事業者制度」の登録番号、ですが・・・これは何かというと
請求書にこの番号が記載されているものについては、「ちゃんと預かり消費税を納税するという証明として認めるので、その分は仕入税額控除を認めます」
というもの。
仕入などの際の支払には必ず「請求書」が発生しますよね?その請求書を発行する業者つまり仕入れ先の取引業者が「適格請求書発行事業者」の登録をしていて登録番号が記載されていれば、その請求書の分については仕入税額控除を認めますという話です。
適格請求書発行事業者というのは
- 課税業者(消費税を納税する義務のある業者)でなければ取得できない(つまり免税業者はこの番号がもらえない)
- 消費税額を明記できる請求書式になっていないといけない
という縛りがあるので、請求書を受け取って支払った事業主の方としては「請求書に、事業者登録登録番号が記載されていればOK」という風に、簡易的に判別がつく、というわけです。
んで?ウチは何をすればイイの?
さて、上記の例では「自分が仕入れ業者に支払うときに」という視点で説明をしていました。
ただ、立場を変えて「自分が仕入業者側になったら?」と考えると、インボイス制度に対応してやらなければならないことは色々出てきます。
適格請求書保存方式の登録番号を取りましょう
自分の会社が「仕入業者側」になって請求書を発行するという場合、この番号を請求書に記載していないと相手の取引先様に迷惑がかかることになります。(あるいは、取引先様から「消費税払わないからね」とか「取引やめるわ」と言われるリスクも)
ちなみに登録番号は2021年10月(令和3年10月)から登録申請して取得することができるとのことです。
請求書の複数税率対応・消費税明記に対応しましょう
適格請求書保存方式の登録番号を取るためには、「複数税率に対応して、税率ごとに消費税額が明記できるようになっている請求書」を発行できなければなりません。
この部分は「請求書発行システム」とか「販売管理システム」など、お使いのパソコンやITシステムに大きく関わることなので、なるべく早めに確認・検討するようにしましょう。
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