独立・開業解説~12~

独立開業~法人じゃないと信用が・・・は間違い~

独立・起業するなら「法人設立」のほうが有利というけれど・・・どうなのよ?

「法人設立のほうが有利」はウソが多い

「法人設立と個人」のページでも解説したように、事業を始めるのに法人設立したほうが良いというのは、場合によっては確かにそうだという事もありますが、これからサラリーマンを辞めて右も左も分からない状態でひとり事業を立ち上げようという時にいきなり法人設立というのは、実際に筆者自身が独立開業を体験し、また他の事業主さんの様子を見聞きした経験から言うと「有利」かどうかは怪しいものです。(その辺りの詳しい話は「法人設立と個人」のページをご覧ください)

信用度が違う・・・は完全な間違い

よく巷の解説サイトや起業支援セミナーなどでこういうことを言われます。「法人格を持っていて事業を行うのと個人事業主としてやるのとでは信用度が全然違う」と。もちろん、法律的にも社会的にも「法人格をきちんと取得して会社組織として事業を行う」のは社会的に高い信用が得られることは事実です。けれどもそれは、「ちゃんと法人組織としてある程度の規模の事業を継続的に行った上でのさらなる信用」の話です。そこんとこ、混同しないように注意してください。

この解説コーナーでは「サラリーマンが一念発起して独立開業を目指した(開業した)」というケースを想定して解説しています。そういう人・・・つまり一人親方でやっていくことを決心して、仕事場も自宅を事務所にし(お店を開きたい方はもちろんテナントなどでお店を開店することもあるでしょうけれども)、顧客も取引先も今までのコネや人脈を頼りにひとつひとつ開拓していくという、そういう仕事の仕方を選んだ人が、その独立開業当初に考えるべきこと、というのがテーマです。そういう状況下で、

これから独立して開業しようという事業主にとって「法人だから有利、個人だから不利」というのは全くの机上の空論で、間違いです。

そもそも独立開業したばかりの駆け出し者が既存の法人並みに信用してもらおうというのがおかしい

サラリーマンを辞めて独立開業したばかりの人というのは、社会的(世間一般的)に見たら信用なんて何もありません(厳しい言い方をして申し訳ありませんが、けど実際そうでしょ?)。

サラリーマン時代にどれほど輝かしい実績や経歴があっても、ひとり個人事業主として開業した瞬間にそんな過去の経歴なんて何の飾りにもなりません。開業初日は、「売上金額ゼロ円、顧客取引先なし、実績なし」なんですから、それを「信用してくれ」と言う方が非常識です

そういう実態なのにわざわざ費用かけて法人にしたって、世の中誰も信用なんてしません。そんな甘い世界じゃないですよ、商売・事業の世界というのは。

実際に体験したことのある方なら、そんなこと当たり前なんです。個人事業主だろうが法人だろうが、最初は信用なんてまるで無いんだから、スタート時点で「法人だから」というのは格好付けくらいにしかなりません。有利になるなんて絶対にありえない。

信用はひとつひとつ積み上げるべきもの

今の時代、ペーパーカンパニーみたいな会社もあれば、逆に個人事業主なのに億単位の売上を得ている事業主もあります。世の中の経営者やビジネスマンは、そういう事をよく理解していますから、「法人だから信用、個人だから信用しない」なんていう短絡的な行動はしません。

その人を、その会社を信用してよいか?はひとつひとつの積み重ねで時間をかけて付き合って決めていきます。最初は御用聞き程度の仕事しかさせてもらえなかった取引先でも、3年経過して誠実さや技術の高さを認めてもらえれば大きな取引をしてもらえるようにもなります。ひとつの取引先で高い評価を得られれば、それを糧に次の取引先ではより短期間に信用を得ることも可能です。

相手先・取引先に信用してもらえるかどうか?は法人格があるかないか?ではなくて、実際にその事業者(個人経営者)が信用できる相手か?取引するのに有利な相手か?を長い時間かけて判断した結果が全てです。

法人格じゃないと契約してもらえないケースは?

ただもちろん、事業の内容や取引相手によっては「法人格が相手でなければ契約締結できない」という縛りが生じることもあると思います。そういう事が最初から想定されるということであれば、法人設立して船出をするのもアリかもしれませんね。

ただし、私の経験と実績から言えば、「一部上場企業が相手でも、担当窓口の方や直接の取引相手の部署の方から絶大な信頼を頂けたので、個人事業主でも契約締結できるよう取り計らってもらった」というケースがいくつかあります。「個人事業主だから不利、信用がない」と諦めたり、逃げこむ理由を作ったりせずに、まずは「どうやったら個人事業主で成果をあげられるか?」を一生懸命考えたほうが良いのではないでしょうか?

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