独立・開業解説~6~

独立・開業~自営業の節税対策?~

独立・開業して個人事業主になったら「節税対策」が大切というけれど・・・ホントのところどうなのよ?というお話。

こうすればバッチリ!みたいな節税対策はありえない

今回は先に結論を言っておきましょう。ナンか裏ワザのような「こうすればバッチリ!」的な節税対策方法なんていうのは、ありません、絶対に。(もしそういう方法やテクニックを解説したり指南したりセミナーで話したりなんていう人がいたら、それ絶対にウソです。ウソじゃなければ「ホントは実際にやったこともないのに出来ると信じこんでる」だけなので、そういう話に引っ掛からないように要注意!です)

よくサラリーマンの方から「自営業になるといろいろ節税対策とかテクニック使うんでしょ?」的な事を質問されますが、そんなテクニックありません。ちょっとした心構えのような事ならたくさんありますが、「節税対策するならコレをやれ」みたいなものは、ナイんです、本当に。

そもそも節税対策って・・・?

払わなきゃならない税金を、法律違反やズルをして「払わずにすまそう」とするのは脱税です、節税ではありません。節税は「払うべき税金を、正当な方法で低く抑えるようにする」ことです(→と、私が勝手に解釈していますが、当たらずとも遠からずだと思います)。

で、自営業(個人事業主)の場合、実は「確定申告書」というのをよく理解していれば節税対策っていうのは何をどうするのか?ということが非常にシンプルに分かると思います。

収めるべき税金の額

個人事業主確定申告書

個人事業主(個人経営)の場合、確定申告書というのを提出するのですが、これは右のような書類。自営業の方ならもう見慣れたものだと思います。(国税庁のホームページからダウンロードした書式を画像化して掲載させていただいております)

確定申告書

で、この確定申告書の内容に基づいて収めるべき「所得税」の金額が決まります。確定申告書では図のように右側の「税金の計算」の欄の一番下の項目。ここに書かれた金額が、1年間の事業の結果収めるべき所得税の額となります。

つまり、個人事業主の場合「節税対策」と言ったら、この「納める税金」欄の金額をいかに低く抑えるか?・・・あわよくば「納めるべき税金」の金額よりも「還付される金額」のほうが大きくなれば逆にお金が返ってきますが・・・それこそが「節税対策」そのものということになります。

で、その「納めるべき税金」欄の金額を低く抑えるのに、どういう方法があるか?と言うと・・・方法はひとつしかありません。

それは「控除額」をなるべく多く計上すること

所得から差し引かれる金額

確定申告書3

もう一度確定申告書類を見てください。左下に「所得から差し引かれる金額」という欄がありますね。

これは何かというと、本来税金(=所得税)は所得金額の合計に対して税率何%という計算で決まります。だから、赤枠で囲った欄のすぐ上にある「所得金額の合計」欄の額が大きいと、それだけ納めるべき税金の額も大きくなるのです。

「所得から差し引かれる金額」というのはこの「所得金額の合計」からマイナスしてよい金額ということです。

社会保険料や生命保険、地震保険、寄付金など、控除(=所得額から引く金額)として認められているものがこの赤枠の部分だけある、というわけです。

まっとうな節税対策は「控除額」をなるべく多くすること

先ほど説明した「ひとつしか方法はない」といったのは、この部分の控除額をなるべく多く計上すること、です。

極端なことを言えば、所得額が1,000万円あっても、控除額の合計が900万円あれば、課税される所得の金額は100万円だけになります。こおから、その後の青色申告控除とか諸々積み重ねれば税金の額はかなり低く抑えられるというわけですね。

もちろん、控除の額には限度が決まっていますので、上記のような「控除額900万円」なんてのは実際にはほぼありえないのですが・・・納めるべき税金の額を低く抑えるためには、上記の確定申告書のどの数字をコントロールすればよいかと言うと「所得から差し引かれる額」をキッチリ計上するしかない、というわけです。

控除額として認められているのは主なもので「小規模企業共済」「生命保険料」です。
その他のものは「必要なオカネとして支払う」ものなので、控除額を大きくするためにはその分自分の財布から出て行ってしまうという性格のものですが、生命保険料と小規模企業共済は、将来の自分のための貯蓄みたいなモンです。

貯蓄をしていてその金額が「所得控除として計算してもらえる」というのだから、これら共済や保険にきっちり加入しておくというのが、唯一といえば唯一の節税ノウハウのひとつです。

だからやっぱり税理士さんにお願いしたほうが良い

けれども、この「控除額」・・・限度額は決まってるしどういうお金が控除の対象になるかが結構難しいし・・・そもそもせっかく生命保険とか地震保険とか、寄付金とか払ってるのに控除額の計上をし忘れちゃってみすみす損をしていたりとか・・・自分一人で確定申告をしようとすると、そういう「知識がないゆえの損」を知らない間にしてしまう恐れもあります。

税理士さんならこういう事をミスすることはありえないですし、親切な税理士さん・会計事務所さんなら確定申告の時に「こういう保険に入ってませんか?控除出来ますよ」とうっかり忘れをしないよう確認してくれたりします。その意味でも、個人事業主の方、税理士さんに確定申告やその相談をお願いするのはオススメです。

収入額とか所得額を低く抑えるなんていう、バカな発想をしないこと

この話をすると、結構な割合で「控除額なんて上限が知れてるんだから 納める税金減らすには「収入金額」が少なくなるように、あるいは「所得金額」が少なくなるようにすればイイじゃん!と発想する方がいます。

そういう「愚かな発想」「バカ丸出しな考え」に取り憑かれて脱税ギリギリ、違法ギリギリみたいなところばっかり一生懸命になるようなマネはやめましょう。

納めるべき税金を低く抑えたい気持ちは誰でも持っていると思いますが、だから「収入を低く」「所得を低く」なんていう発想をしてしまうようでは、個人事業主(個人経営者)として、センスも能力もまるでないと認めているようなものです。

せっかく一念発起、自らの収入を自分の仕事で勝ち取るという道を選んだのですから、チマチマと「売上を抑える」とか「所得を低く抑える」なんていうマイナスないじけた発想せずに、頑張ってちゃんと商売で所得を得てそれをきちんと運用するような発想に転換しましょう。

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