小規模事業者のためのインボイス制度解説

インボイス制度解説

事業主としての対応は?

インボイス制度のスタートに当たり、事業主として対応しなければならないことは、大きく分けて2つあります。

  1. 売り手(支払を受け取る側)としての対応
  2. 買い手(支払をする側)としての対応

それぞれどちらも欠かすことの出来ない対応となりますので、順を追って説明していきます。

売り手側としてやっておくべき対応

「B to B」(個人の一般消費者ではなく、業者・会社あるいは個人事業主など事業で取引をする相手)で売上代金を受け取る立場になる可能性のある事業主様の場合は、主に以下のような対応が必要です。

(1)適格請求書発行事業者の登録番号申請をしましょう

2021年10月1日~2023年3月31日までの間に!

取引相手から「おたくの会社(お店)は、ちゃんと消費税を納付しているのか?」を確認するために「適格請求書発行事業者の番号」を求められることになります。(正確には、請求書などの取引書類に明記するように求められます)
適格請求書発行事業者の登録番号は、税務署へ登録申請書を提出し、審査を経た上で登録番号が通知されます。この審査には、多分時間がかかるだろうと言われていますので、なるべく早めに手続きをするのが良いと思います。(詳しくは国税庁のサイトをご参照下さい→インボイス制度適格請求書発行事業者の番号申請手続き

(2)会計ソフトの導入を急ぎましょう

適格請求書発行事業者の登録をして審査に合格するためには、そもそも「適切に消費税を預かって納付している」事が大前提となります。軽減税率(複数税率)制度もあって、「事業上、受け取った消費税額・支払った消費税額」を正確に計算するためには、どうしても会計ソフトが必須になってきます。まだ「手書きで確定申告・決算をしている」という場合には、会計ソフトの導入も含めて「会計・経理業務の見直し・適正化」を進めましょう。

(3)売上・請求管理をIT化しましょう

(2)の会計ソフトのもとになるのは、大抵の場合「月締めの請求書」とか「売上伝票」などになります。これらの伝票類や請求書類に、消費税率が明記され税額が明記されていないと、会計・経理のときに「いったい消費税額はいくら受け取ったのか?何%の消費税なのか?」が分かりません。これらも、その都度手書きの請求書や売上票、というのではとても作業が追いつくものではありませんから、何らかの形で「売上」「請求」などを取りまとめて集計・書類発行出来る仕組みを整えておきましょう。(IT化しておくのが一番良いと思います)

(4)免税業者の方はよく検討して決断を

そもそもご自身(自社)が免税業者だという場合には、インボイス制度への対応にあたり、非常に重要な決断をする必要に迫られます。それは

このまま免税業者のままでいると「適格請求書発行事業者」の登録番号は取得できない→登録番号を取得できないと、取引先(お客様)から取引を断られたり、あるいは「消費税分を支払わない」という対応をされる場合がある・・・このため、以下のどちらかを選択しなければならなくなります。

  • 売上額が伸びそうにないし、取引相手も少ないから、免税業者のままでいく(適格請求書発行事業者にはならない)・・・この場合、「売上に応じた消費税は相手に払ってもらえない事がある」「そもそも取引を断られる恐れもある」ことを受け入れることになります。
  • 免税業者をやめて課税業者となり適格請求書発行事業者の登録番号を取る・・・この場合、「これまで納付せずにすんでいた預かり消費税をきっちり納めることになる(=トータル的に決算後に出ていくお金が増える)」ことになるのを受け入れることになります。

国としては(あるいは色々な解説を見ていると)後者つまり「この際だからちゃんと課税業者になって健全な取引をしましょう」という解説やアドバイスが多いですが・・・筆者の本音としては「どちらが得(あるいはより損がすくないか)」をよく比較検討した上で考えると良いと思います(そのあたりの具体的なご相談は、ご自身の顧問税理士さんとか、あるいは身近な支援機関などでご相談ください)

買い手側としてやっておくべき対応

仕入れ業者(あるいは仕入れでなくても経費として支払うべき費用を払う相手)が一つでもある場合は必ず対応しておきましょう。

(1)会計ソフトの導入を急ぎましょう

これは「売り手側」の場合と同じです。預かった消費税の納付だけでなく「仕入れや経費支払でどれだけの消費税を相手に払って(預けて)いるか?」を正確に記録しておく必要がありますので、やはり会計ソフトは必須になります。

(2)全ての取引先について確認しましょう

全ての取引先(=仕入額や経費支払などで支払の発生する相手)について、1者ずつ「相手が適格請求書発行事業者の番号」を取得していて請求書に記載しているか?を確認しましょう。

(3)よく検討して決断を

全ての取引先が「適格請求書発行事業者」であれば問題ありませんが、取引相手に「免税業者」(=適格請求書発行事業者ではない)がいる場合、厳しい決断(あるいは取引相手への要求)をしなければならなくなります。

  • 支払の際に「消費税分を支払わない」ことを伝えて、実際に支払わないようにする・・・相手に「消費税を抜いた本体価格だけの請求書を出せ」と要求する必要も出てくるかも知れません。
  • そもそも「取引をやめる」・・・免税業者との付き合いを見直す必要が出てきます。ただ、その相手に代わる取引先を予め探しておかなければならない、という面倒さも残ります。

対応は2023年3月31日までに!

この解説記事の一番最初でも書いたとおり、インボイス制度がスタートするのは2023年10月1日です。

ただし、対応はそれ以前に済ませておく必要があるため、どんなに遅くとも半年前の2023年3月31日までには対応を完了しておく必要がある、と筆者は考えています。

そう考えると、この記事掲載時点(2021年9月7日)から考えても1年半しかありません。「税務関連の手続き」「会計ソフトや販売仕入れソフトの整備」「取引先との確認・交渉」などやらなければならない事を列挙すると、1年半はあっという間に過ぎてしまうと思います。

是非、早めにご対応をご検討されることをおすすめします。

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